動物たちの不思議な生態の秘密
元動物園獣医師・ただいま五十三次どうぶつ病院獣医師、動物たちの不思議にせまります。
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つきまるにゃん

Author:つきまるにゃん
生き物を飼うことが
大好きな獣医師です。
いろいろな生き物に
“咬まれ・蹴られ・踏まれ・刺され”
こんな経験から
動物達の不思議な生態にせまります。

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動物達の不思議な生態の秘密
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2012.10.26_23:57
ゾウさん

“ひょぇー”
またまた恐ろしい事故が起こってしまいました。
「静岡県裾野市須山の富士サファリパークで16日未明、アジアゾウに襲われ、飼育員の男性(30)が死亡した事故。襲った雌のゾウは14日朝に子ゾウを出産したばかりだった・・・・・。」

富士サファリパークは会議などで何度も行ったこともあり、
知り合いも多くよく知っている動物園。
とっても心配です。
 






撲も何度もゾウにアタックされた経験があります。
撲の場合はアタックと言っても、水を掛けられる、石を投げつけられるなどで、
直接同じ空間に入ることはなく、すべて檻越しに接していたため、
大事故にはなりませんでしたが・・・。

動物園の動物で飼育が一番難しいのは、ゾウだと言われています。
今までも、今回のような事故がたびたび起こりました。
撲自身もいろいろな動物に接してきましたが、ゾウがもっとも恐ろしく、苦労しました。
そして、一番危険な動物は間違いなくゾウです。
え、トラやライオンの方が危ないんじゃないの・・と思うかもしれませんが。
トラやライオンとは決して同じ空間にはいることはありません。
もし治療しなければならない時は必ず麻酔をかけ、寝かせてから治療するため、
鍵のかけ忘れやドアの閉め忘れをしない限りは決して事故はおこりません。

しかし、ゾウはあの大きな巨体のため、
麻酔をかけることが難しく、
麻酔によって長時間横になると、
自分の重さで筋肉の損傷が始まり、
内臓の動きも鈍くなり、死亡してしまうことがあります。
よって一般に使用している麻酔薬を使用することができません。
実際に治療のために麻酔をかけることはほとんどなく、
ケガや病気になると麻酔なしで治療を行わなければなりません。
そのため、治療のために飼育担当者はゾウさんと同一空間に入る必要があります。

賢いゾウさんは信頼関係ができると飼育員の命令によく従います。
そのためゾウの飼育員は日々の管理として調教を行い、ゾウと信頼関係を築きます。
だけどこれが非常に難しい。
ゾウは賢いのですが、用心深いため、そう簡単には信頼してくれません。
信頼をえるために10年近くかかった飼育員もいます。

しかし、いくら信頼関係ができても5トン近い体重のゾウさん、
本人は軽くちょっと鼻を振ったつもりでも、
それがあたった人間は何メートルも飛ばされ大けがをします。
そして、普段はおとなしく穏やかなゾウさんですが、
雌の場合、出産直後はどうしても気が立っていたり、
イライラし情緒不安定な状態になります。
ちょっとした音などが刺激になり
自分の子供を攻撃することもあります。
今回の事故は興奮状態になったお母さんゾウから
子供を助け出そうと、母親ゾウの部屋に入った飼育員が母親に攻撃されたようです。
けっして不注意からの事故ではありません。
興奮しているゾウを何度となく見たことのある撲には、
子供を助けるためとはいえ、興奮状態のゾウに近づくなんてことは絶対できません。
この飼育員のゾウに対する愛情のすごさに感動しました。

またオスゾウの場合には、
男性ホルモンが数週間から数か月の間大量にでる
マストと呼ばれる時期があります。
このマストになると
目はギラギラと輝き
側頭部からは常に謎の液体を流し続け、
持続的にオシッコをたらたらと漏らし、
常にイライラし攻撃的になり、
飼育員の命令など全く従わなくなります。
そして、近づく飼育員を殺そうとさえします。

以前、雄ゾウの飼育は危険なため、日本では雌ゾウしか飼育していませんでした。
雄ゾウはいませんでした。
しかし、野生下で絶滅の危機に瀕しているゾウ、
野生のゾウを捕まえて動物園で飼育するのは止めることにしました。
そのため、継続的にゾウさんを飼育するためには、
日本国内においても繁殖させる必要があります。
そして、やさしく賢い雌ゾウだけではなく、
恐ろしい雄ゾウも飼育することになりました。
撲が勤務していた動物園の雄ゾウ「アロー」も確かに怖かった・・。
撲が前を通るたびにパオーンと雄叫びを上げ、
鼻を大きく振り攻撃してきました。
鼻の中にたくさんの水をため、撲にかけました。
水鉄砲のように飛ばすのではなく、バケツ3~4杯分の水を一気に鼻から吹き出します。
全身びしょ濡れです。
石を投げつけられたりもしました。
彼は撲のことは大嫌いだったようで。

しかし、彼の足の裏は化膿しやすく、
普段のケアと治療が必要でした。
とっても怖いため、担当飼育舎に足の裏だけ檻の隙間から出させてもらい治療をしました。
皮膚は厚く注射など絶対無理。
薬は餌に混ぜて与えるのですが、
体重換算で薬の量をきめるので、大量の薬となります。
餌に混ぜても匂いなどで気付くようになり
なかなかうまく治療ができませんでした。
1回の量が多く、薬の値段が数万円になることもあり、
それを飲まなかった時は、これがすべて無駄、このショックは・・・・。

「アロー」は雌の「インディ」が発情すると、
彼女を追いかけ何度となく交尾をしました。
しかし、残念ながら彼女は妊娠することはありませんでした。
このアローはオシッコをするとき“びよーん”とオチンチンが伸びました。
これがとてつもなく大きい、
子供たちは足が5本あると勘違いするほど。
このアローも残念ながら4年前に死亡してしまいました。

撲はゾウさんから動物の恐ろしさ、飼育の大変さ、楽しさを学びました。
今でもときどき、アローに追いかけられる夢を見ます。
今回の悲しい事故を知り、あらためてゾウさんことを思い出した撲でした。


<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
 休診日 月曜日



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