動物たちの不思議な生態の秘密
元動物園獣医師・ただいま五十三次どうぶつ病院獣医師、動物たちの不思議にせまります。
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つきまるにゃん

Author:つきまるにゃん
生き物を飼うことが
大好きな獣医師です。
いろいろな生き物に
“咬まれ・蹴られ・踏まれ・刺され”
こんな経験から
動物達の不思議な生態にせまります。

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動物達の不思議な生態の秘密
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2012.03.11_20:10

舐める

「痛て」

僕の左手の人差し指にモモちゃんの犬歯がみごとに食い込んでいました。
犬歯が神経を直撃しているのか、
つま先から、頭のてっぺんまで

ピキーンと痛みが突き抜けました。

しかし、噛まれ慣れている僕は、こんなことでは動揺しません。
できるだけ冷静を装い、

優しく 「痛いじゃない」とモモに声をかけました。

モモちゃんは、はっと我に返ったのか、すまなそうに口を開けました。

モモちゃんは腫瘍の手術のため入院していたちっちゃなチワワです。
手術後の傷口の様子をみるため、
僕が不用意に傷口に触れてしまったための “ガブリ”でした。

人差し指には、上下2つの見事な穴、
そこから、ゆっくりと赤い液体が流れ始めました。
痛さのため、しかめっ面で傷口を見ている僕に

モモは顔を傾け、下から僕の顔を覗き込みました。
モモの潤ませたまん丸の大きな目と
僕の痛みをこらえ、小さくなった目がパチッと合いました。
あのウルウル目は間違いなく、僕のことを心配していました。
自分で噛んだのに

しかし、この目は僕から“痛みと怒り”をとりさってくれました。
今度モモは、僕の人差し指をぺろぺろと舐めはじめました。
不思議なことに、舐められていると、本当に傷の痛みがやわらぎました。

犬や猫はケガをすると、その傷口を舐めます。
自分が届かない場所のときは、仲間同士で舐めあいます。
舐めることで傷口をきれいにし、痛みを和らげます。
このように動物たちがケガや病気を自分で治したり、
予防をしたりする行為を

「ズーファーマコロジー zoopharmacognosy」と言います。

チンパンジーはお腹が痛いとある種の薬草を食べることで知られています。
ゾウもある特定の場所の土を食べます。豊富に含まれているミネラルをとるためと、
草に含まれている毒を吸着させ、体の外に出す解毒の為に食べます。
ウサギ・ハムスター、他の動物たちもケガをすると傷口をよく舐めます。
僕たち人間も、誰かに教わったわけではなく、
指を切ったら無意識にその指をくわえ、傷口を舐めたり、唾液をつけたりします。
その間は確かに痛みが和らぎますし、血も出にくくなっています。

舐めることは、治療になるの?

唾液の中には細菌の活動を抑えたり、破壊する働きの物質が含まれており、
また血を出にくくしたり、傷を修復する酵素も含んでいます。
その他、痛みを和らげる働きもしてくれます。
唾液には確かに傷を治す効果があります。

しかし、傷を治すはずの唾液が、時には傷を悪化させてしまうこともあります。
唾液には治す物質とともにバクテリアも含まれており、
このバクテリアが問題を起こすこともあります。
また、舐めすぎによっての炎症がおき、皮膚炎や脱毛が起こることがあります。
猫に舐められことのある人はわかると思いますが、
猫の舌はザラザラしており、少し長く同じ場所を舐められていると、痛く感じます。
あのザラザラの舌で舐め続けると、皮膚は赤く炎症が起こしてしまいます。

手術の傷口の縫合した糸を、動物たちは治療のためとは理解せず、
異物と思い、とってしまおうと必死に舐めたりもします。
そのことにより、縫合した糸が取れてしまい、
ぱっくりと傷口が開いてしまうこともあります。
このように、舐めすぎは治すどころか悪化させることになります。

僕たち人間と暮らしているペットたちは野生の動物と違い餌を探す必要はありません。
また敵に襲われることもないため、周りに注意を払う必要もないため暇がたっぷりあります。
そのため暇な時間は、傷を必要以上に舐め続けてしまい、
結果として唾液の効果より、舐めすぎによる悪化の方が問題となってしまいます。
その防止のため僕たち獣医師は、
手術後にエリザベスカラー(首の回りにおおきな円錐形の物)
を付け傷口に口が届かないようにしたり、包帯で覆ったりします。

噛まれ慣れた僕が教える、噛まれたらどうするか? 

★噛まれたら冷静に話しかけ、相手の興奮を抑える。
噛むことは悪いと知っているため「しまった」と思い離してくれます。
逆に興奮すると「離すものか」といっそう強く噛みます。
ただし、野生の動物はだめですよ。噛むことをちっとも悪いとおもっていませんし
何と言っても人間は敵ですから、傷つけようと噛むのです。
もしくは餌として食べるために噛むのですから。                            

★噛まれた場所を無理に引っ張らない。
逆に口の中に押し込むぐらいがいい。  
犬歯の向きを考えて下さい、口の奥の方向に曲がっていますよ。
引き抜こうとするといっそう食い込みます。
押し込むと犬歯が外れやすいとともに
奥に押し込むことによって苦しくて口をひらきます。


猫は〝舐める”が大好き

眠る前に手を舐め、
目を覚ませば体を舐め、
御飯の後も体中を舐め、
何かする前と後にとりあえず舐めます。 

舐める理由は、
体をきれいにする 
ノミを退治する 
無駄な毛を取り除くためといわれています。 
飼い猫の祖先は暑い北アフリカの砂漠に暮らしていたため、
毛を濡らすことにより気化熱を発生させ体を冷やしたとも言われています。

そして、舐めている時はとっても幸せそう。                          
高いところに飛び乗ろうとジャンプしたのに落ちた時、
虫を捕まえようとして失敗したとき、
恥ずかしい時の照れ隠しに体を舐めます。  
怒られた時にもやっぱり体を舐めます。              
舐めることは心を落ち着かせる作用もありそうです。

噛まれて今まで一番痛かったのは
シマウマ。      
上下に立派な歯がきれいに並んでいて、噛まれると広い範囲でとっても痛い。
咬まれた場所はお尻 ズボンの上からだったけど見事な歯型が1か月のこりました。

<東京都大田区大森東 五十三次どうぶつ病院 獣医師 北澤 功>




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No title

つきまるにゃんさま

初めまして。
過去記事へのコメントお許しください。

愛犬が肉球をすりむいてしまい、その対応を調べていてこちらにやってきました。
大したすりむきではないのですが、気にしてなめてます。

なめるというのは動物本来の治療だとも思えるので、なめさせておけばいい気がするのですが、「なめ壊し」ということもよく聞きます。
今は靴下をはかせてなめないようにしているのですが、服が苦手なイヌなので、靴下でも相当転生ダウンして、クレートにこもりっきりです。

なるべくなら自然な形で治って欲しいのですが、なめることの治癒効果と悪化の可能性を考えると、やはりなめるさせるのは避ける方向で行った方が良いとお考えですか?
アドバイスをお聞かせ頂ければ嬉しいです。
ホセ母 | 2014.05.21 09:06 | edit

Re: No title

> つきまるにゃんさま


コメントありがとうございます。




舐めるに関してですが、

基本的に洗浄・殺菌・治癒促進作用があります。

しかし、舐めることによる過度の刺激は炎症をおこします。

野生動物は傷などを舐めて治します。

野生動物は常に危険と隣り合わせの上、

餌を手に入れるため忙しいので、

必要以上に舐める時間がありません。

暇な時間がない。

時間があるときは寝ることによって体力温存。

これ以上舐めると、悪化することも知っています。




しかし、人と共存を始めたワンちゃんは、

餌を探す必要も敵もいないため、時間がたっぷり

傷口を舐めると痛みを抑える作用があるため、

暇さえあればなめ続けてしまいます。

その為、治療効果より、刺激による悪化のほうがうわまわってしまいます。




軽い傷は、

飼い猫は舐めすぎて傷を悪化させ、

野良ねこは、舐めてなおします。




暇な時間をつくらないように忙しくできれば、

何もせずなめさせるほうがいいですが、

それは、無理なので、

傷口は舐めないようにしたほうがいいですよ。


>
> 初めまして。
> 過去記事へのコメントお許しください。
>
> 愛犬が肉球をすりむいてしまい、その対応を調べていてこちらにやってきました。
> 大したすりむきではないのですが、気にしてなめてます。
>
> なめるというのは動物本来の治療だとも思えるので、なめさせておけばいい気がするのですが、「なめ壊し」ということもよく聞きます。
> 今は靴下をはかせてなめないようにしているのですが、服が苦手なイヌなので、靴下でも相当転生ダウンして、クレートにこもりっきりです。
>
> なるべくなら自然な形で治って欲しいのですが、なめることの治癒効果と悪化の可能性を考えると、やはりなめるさせるのは避ける方向で行った方が良いとお考えですか?
> アドバイスをお聞かせ頂ければ嬉しいです。
つきまるにゃん | 2014.05.21 09:29 | edit