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動物たちの不思議な生態の秘密
元動物園獣医師・ただいま五十三次どうぶつ病院獣医師、動物たちの不思議にせまります。
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つきまるにゃん

Author:つきまるにゃん
生き物を飼うことが
大好きな獣医師です。
いろいろな生き物に
“咬まれ・蹴られ・踏まれ・刺され”
こんな経験から
動物達の不思議な生態にせまります。

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動物達の不思議な生態の秘密
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カンチャンと茂雄さん



「先生、みなさん、おはようございます」
パナマハットをかぶり、上質なツイードのジャケット、
背筋のピンと伸びた、
とってもおしゃれなお爺ちゃんの声が病院に響き渡ります。
“茂雄さん”が柴犬の“カンチャン”を連れてやってきました。
カンチャンはリードを2本つけています。
1本は茂雄さんのベルトに縛り、
もう1本は右手で握っています。
受付の前に来ると、
茂雄さんはポケットから、
お金の入った封筒とメモ用紙を取り出し、
メモを大きな声で読み上げます。
「予防の薬、心臓のくすり、爪切り・肛門、お願いします」
自分の孫ぐらいの看護師さんに深々と頭を下げます。
そして封筒とメモ用紙を看護師さんに渡します。
封筒の裏には、
奥さんのやさしい字で
「足りないときは、次回もたせます。
 病院を出たら、私に連絡お願いします」
カンチャンは、茂雄さんの横に座り、
茂雄さんの顔をじっと見ています。

順番になり、診察室に入ってもらいます。
「カンチャン、元気ですか?」
少し耳も遠いため、僕ははっきりと大きな声でたずねます。
「はい 元気です」
「何か心配なことありますか?」
「ありません」
2人の大きな声が病院中に響きわたります。

茂雄さんは72才、
4年ほど前から物忘れが始まりました。
病院に来たけど、何しに来たか忘れてしまい照れながら帰ったことも、
一度は、茂雄さんだけきて、カンチャンがいない、
ビックリして外を探してみると、
自動車の行きかう交差点を
カンチャンがリードをずるずる引きずりながらポツポツと歩いてきました。
あわてて、病院に連れて行きました。
茂雄さんを見つけると、尻尾を振り振り、茂雄さんの横にお座り。
この時以降は奥さんと相談して、リードは2本、
1本はベルトに結びつけることにしました。

最近の茂雄さんは、だんだんと感情の起伏が激しくなり、
時々癇癪をおこすようになってきたそうです。
お嫁に行った子供の顔と名前も、忘れてしまったことも、
子供がたまに来ると「どちら様?」・・・。
「私のことも時々忘れ始めている」と、
奥さんはぼやいていました。
外出は必ず奥さんと一緒に出掛けるのですが、
動物病院に来るのだけは、カンチャンと2人で大丈夫だそうです。
カンチャンと一緒の時は、
怒ることが一切ありません。
いつもニコニコしています。
名前もしっかり覚えているし、
病院でもカンチャンと一緒だとしっかりしていました。
家でもカンチャンのゴハンとお水は茂雄さんがやっているそうです。

以前は、茂雄さんの前を元気いっぱい好き勝手に歩き回るカンチャンを、
茂雄さんがリードで引っ張って散歩をしていました。
今のカンチャンは散歩中の茂雄さんの横、
車道側にぴったりと寄り添い、
いつものコースを歩きます、
違う道に行きそうになると、
カンチャンはお座りをして動かず、
「ワン」の一言
正しい道を教えます。

ある朝、奥さんが庭の鉢植えに水をあげている時、
いつもは必ずかける玄関の鍵をかけ忘れてしまい、
茂雄さんが一人で、家から出てしまいました。
あわてて、奥さんが家の周りを探しますがどこにもいません。

そんな時、カンチャンも家を飛び出してしまいました。
奥さんはパニック、
近所のスーパー、海辺の公園を探しましたが、
2人とも見つかりません。
動物病院にも探しに来ました。
警察に届け出をして
警察、御近所さん、散歩仲間、みんなで探しました。
奥さんは家で待ってもらうことに、

いなくなって3時間ほどたった昼すぎ、
家でじっと待つことができない奥さんは、
玄関の前でオロオロしていました。
そんな時“ワンワン”カンチャンの声が、
声の方向を見ると、
カンチャンが、茂雄さんとお坊さんを引き連れて歩いてきました。

お坊さんの話によると、
お寺の境内で、
茂雄さんが「かんちゃ~ん、かんちゃーん」
名前を呼びながら、ウロウロしていたそうです。
大きな声と、はだしのままの茂雄さん、
お坊さんが心配になり声をかけると、
「カンチャンがいない・・・」と、
とりあえず、お坊さんの雪駄を貸して、
一緒にカンチャンを探しました。

そこに、大きな柴犬が走ってきました。
「カンチャン」
お父さんが呼ぶと
カンチャンは尻尾をブルンブルン振りながら、
お父さんのまわりをグルグル走り回りました。
「カンチャン、探したぞ」
お父さんはカンチャンの頭をナデナデ。

14年前の暑い夏の朝、
お寺の縁の下で“く~んく~ん”
やっと目が開いたばかりの子犬がないていました。
いつも境内でお参りしてから会社に向かうお父さん。
子犬を抱き上げると、チュウチュウ指を吸い出したそうです。
とりあえず住職さんに預け、会社に向かいました。
その日会社は早退、ペットショップでミルクと哺乳瓶を買って、
「かんちゃん」を迎えに行きました。

お寺は2人の散歩コースとなりました。
しかし、家から歩いて30分、
お寺に行くためには大通りを超えなくてはいけないため、
最近はお寺に来ることはなくなりました。

お坊さんは植木用の麻紐をリードの代わりにかんちゃんの首輪に結んで、
茂雄さんにもってもらいました。
カンチャンと会えた茂雄さん、
落ち着きを取り戻し少ししっかりしました。
そして、カンチャンが茂雄さんを引っ張りながら、
2人でお寺を出て行きました。
心配のためお坊さんも一緒についてきてくれたのです。

認知症と肝臓病のお父さん、
白内障で目があまりよく見えず、
心臓の病気のカンチャン。
毎日2人はお互いに助け合いながら散歩をしています。


<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 〒143-0012 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日

臨時休診のお知らせ

2月10日(日)
都合により休診いたします。






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