動物たちの不思議な生態の秘密
元動物園獣医師・ただいま五十三次どうぶつ病院獣医師、動物たちの不思議にせまります。
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つきまるにゃん

Author:つきまるにゃん
生き物を飼うことが
大好きな獣医師です。
いろいろな生き物に
“咬まれ・蹴られ・踏まれ・刺され”
こんな経験から
動物達の不思議な生態にせまります。

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動物達の不思議な生態の秘密
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おっぱいのじかんでちゅよ~

「み~ み~」
小さな箱から 僕を呼ぶ声がします。
日にちが変わろうとする真夜中、
彼は、僕が部屋に入ってきたのに気付いた様子。
「み~ちゃん、オッパイの時間でちゅよ・・・。」
誰もいない病院の中、
40後半のひげ面の親父の幼児言葉が響きます。
たくさんのタオルの中から小さな み~ちゃんが顔を出しました。
かすかに右目だけを開けます、左目はまだ開いていません。
み~ちゃんは、約生後1週間の雄の子猫。
病院に来て4日目。
ごみ捨て場で捨てられていたのを拾われ、病院にやってきました。
病院に来た時のみ~ちゃん、
お腹はぺったんこ、痩せて、皮と骨だけ、
顔は目ヤニと鼻水でぐちゃぐちゃ、
呼吸も弱く、
体温も下がり、
鳴き声は今にも消えそうに小さく、
息が漏れるような 「ピ~」 
とても危険な状態でした。
ありがたいことに、拾った方が元気になったら飼ってくれるとのこと。
1日目のみ~ちゃんは飲む力も弱く1回で飲む量は1~2ml、
それも30分もかかりました。
小さな体に注射針を刺し点滴もしました。
赤ちゃんの生命力はすごい、
3日目になると、乳首をくわえると力強くチュウチュウと吸えるようになりました。
お腹が空くと大きな声で「み~ み~」僕を呼びました。
1回で飲む量も増えひとまず安心です。
これで僕の母親はおしまい、
新しいお母さんのもとにいきました。

僕は今までいろいろな仔たちにミルクをあげて育てました。
生まれてすぐお母さんが死んでしまったキリン。
赤ちゃんなのに、僕より大きいキリンは、
僕が脚立に乗って、両手で大きな哺乳瓶を持ちあげて哺乳です。
長い首がドクンドクンと動きミルクが入っていくのがわかります。
1回で3リットル以上飲みました。
飲み終えた後、とっても柔らかい上唇に触れるのが楽しみでした。
お腹が空いた時の僕を見る目、
大きな瞳がウルウルしていてかわいかった。

ほぼ同じ時期にお母さんに育児放棄されてしまった
チンパンジーのアサコと
オランウータンのフジコ、
二人を一緒に育てました。
オムツをつけた二人はいつもくっついていました。
抱っこしながら順番にミルクをあげます。
最初は陽気で元気いっぱいのアサコ、
乳首をくわえると、すぐにグビグビと飲み始めます。
半分くらい飲むと、ウトウト途中で寝てしまいます。
ほっぺをツンツンして再び飲ませました。
次はのんびり屋なのに気難し屋のフジコ、
乳首が上手くくわえられないと、
両手で頭をかかえ ピ~ピ~
足はバタバタ、
ヒステリーをおこします。
やっとうまくくわえても飲むスピードがゆっくり、
途中で乳首がずれると、再び ピ~ピ~。
飲み終えるまでに40分以上かかることもありました。
飲み終えたフジコを肩に抱き上げ背中を トントン ゲップをさせます。
フジコはせっかく飲んだミルクを
ゲップとともに僕の背中に吐き出すことも度々ありました。

コウモリ、小さな注射筒に特製乳首をつけ、少しづつ飲ませます。
ちょっとでも多く入ると鼻から “ぷしゅ”ミルクを吹き出します。
体重はわずか2g、1回で飲む量もほんの少し、
3時間間隔の哺乳でした。
怪獣のような顔でもミルクを飲んでいる時は 天使 に見えます。

ツキノワグマ、哺乳瓶の乳首がうまく口に入らなかったり、
お腹が空きすぎて焦っていてうまく飲めないと 
ヒステリーをおこし、
噛みついてきます。
上手く乳首が口に入るまでは恐怖の時間、
腕は傷だらけで苦労しました。

レッサーパンダ、とにかく可愛い。
お腹が空いて僕を呼んでいる時、
飲んでいる時、
飲み終わって寝ている姿、 
とにかく全てがまるでぬいぐるみ、
誰もがメロメロになります。

楽なのは牛、僕の姿を見ると、
べ~べ~ と鳴きながら寄ってきて、
大きな哺乳瓶の乳首に食いつき、いっきに飲み干してくれます。
ちなみに、母牛のミルクは人間が飲み、
仔牛は粉ミルクで育つのです。

ノウサギ、これもかわいい、
日本の野山に住んでいるトウホクノウサギは、
生まれた時から毛が生えています。
この毛がふわふわ。
このウサギは、草むらに隠して子育てをするため、
母親は天敵に見つからないように、できる限り仔ウサギに近づきません。
そのため哺乳の回数が極端に少ないのです。
腹もちがいいようにとっても濃いのが特徴です。
いっぱい飲むと、柔らかいお腹がプクッと膨れます。


哺乳の期間は動物たちによって様々です。
犬は1か月、猫も1か月、
母親がいる時は半年ぐらいまでフードを食べながらオッパイを飲む仔もいます。
人間で約1年、
長いのはチンパンジー5歳ぐらいでもオッパイを飲む仔も結構います。
短いのは寒い極地に住むアザラシ、ズキンアザラシなどわずか4日間だけ。
そしてこのミルクには秘密があり脂肪分は40%以上あるそうです。
人間が飲んだらすぐに下痢しそう、
ちなみに人間の母乳の脂肪分は3.5% です。
寒いところに住むアザラシは脂肪分を貯めこむ必要があり、
このように濃いミルクとなりました。
僕のお腹の脂肪、決して怠けているからついているわけではありません。
冬の寒さに耐えられるように今から貯めているのです。

フラミンゴは鳥なのに仔にミルクを与え育てます。
そのうえお父さんもミルクをあげます。
どうやってあげるかというと、
鳥にはオッパイがないため口からミルクをだします。
このミルクは喉の奥にある“そのう”という器官でつくられます。
成分はタンパク質と脂肪のほかに羽の色のもとの色素も入っています。
この色素があるため赤いミルクとなります。
おもしろいことに、この色素を仔にあげている時は、
親の羽の色がだんだんと薄くなります。
 
“み~ み~ ”元気な声が聞こえます。
「あっ!み~ちゃんだ」
新しいお母さんのもとに行ってから1週間、
み~ちゃんの元気な声が病院中に響きました。
診察台に乗せると、ピカピカのキャリーバックから小さなピンクの肉球が見えます。
入り口を開けると、恐る恐るピンクの鼻と口の小さな顔が飛び出しました。
僕の顔を見て、首を傾げながら ミャ~ 
素早く抱きかかえた僕は、み~ちゃんの顔に僕の顔をスリスリ、

「み~ちゃん、いい子でちゅね~」

病院中に僕の声が響き渡りました。
その後、受付からは失笑が・・・。




<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日

9月の臨時休診のお知らせ
 9月21日(月)~22日(火)は休診とさせていただきます。
 

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