動物たちの不思議な生態の秘密
元動物園獣医師・ただいま五十三次どうぶつ病院獣医師、動物たちの不思議にせまります。
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つきまるにゃん

Author:つきまるにゃん
生き物を飼うことが
大好きな獣医師です。
いろいろな生き物に
“咬まれ・蹴られ・踏まれ・刺され”
こんな経験から
動物達の不思議な生態にせまります。

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動物達の不思議な生態の秘密
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2015.01.11_14:13
バーでバーボン

2015年1月 診察を終え、
ラジオを止め、明かりを暗くし、待合室でぼ~っとしている僕に、
少し外に飛び出た左右の目をバラバラに動かしながら、
音もなく、ゆっくりと“あいつ”近づいてくる。
僕は手に黒い物体をそっと乗せる。
“あいつ”は、20cmほど近づいて身体の動きを止め気配を消した。
目だけは左右バラバラに動かしている、
キョロキョロと動かしていた左目が僕の手の上の小さい黒い物体を見つけた、
バラバラの方向を見ていた左右の目が両方とも手の上の物体に向く、
するどい?眼光は、手の上の黒く光る小さな生き物を『ロックオン』
手の上の生き物が僕の手から逃げようと動いた、
その瞬間“あいつ”の口から、ものすごいスピードで長い舌が飛び出し、
舌の先で手の上に乗っていた“コオロギ”を捕らえ、
また、ものすごいスピードで“コオロギ”とともに口の中にもどっていった。
新しい年を迎え僕は新しい相棒を手に入れた。
“あいつ”は『エボシカメレオン』

僕が初めてカメレオンを見たのは中学生の時、
くるくる巻いた尻尾、
左右バラバラにキョロキョロ動く目、
緑と赤と黄色の体色
その色が環境により変わる、
長く伸びる舌、
この時の僕はこの生き物は「小さい怪獣」だと、
いつか戦ってみたい、いやいや飼ってみたいと思いました。

どこを見ているの?
丸く外に突き出した目をカメレオンは、
自由自在に前後上下にキョロキョロと動かします。
それも左右違う方向を向きます。
ということは、左右で違う物を見ていることに、
全く異なる2つの画像が、頭の中に浮かんでいるということになります。
この目のおかげで、ほぼ360度、頭を動かさず、
獲物を捜すことができます。
獲物を見つけると、今度は両目でその獲物を捉え、距離を測ります。
そしてものすごいスピードでハンティング。
この目はレンズの曲率を自由に変え拡大してみるという
望遠レンズのような機能もそなえており、
その視力は30m先まで見通せると言われています。

舌でハンティング
ライオン、トラ、ワニは鋭い歯、
鷹は爪で獲物を捕まえます。
ゾウは鼻、キリンはキックと首、馬はキックと歯で戦います。
そして、カメレオンは舌でハンティングします。
カメレオンはあの長い舌は丸く口の中にしまい込んでいるわけではありません。
舌の根本に舌骨という骨があり、
その周りに縮んだバネのように舌がついています。
舌骨は筋肉で喉の奥にひっぱられており、
この筋肉が弓の役割で、舌骨が矢となります。
獲物を見つけると矢が放たれるように舌が飛んでいきます。
舌の先から強力な粘液をだし獲物をくっつけてとらえると、
あっという間に口の中にもどします。
舌を発射し、口の中に戻るまでわずか20分の1秒、
目にもとまらぬ速さです。
舌の長さは体長の1.5倍ほどあります。
僕の身長は165cmなので、
僕がカメレオンだったとしたら、
2.475mの舌を持つことになります。
舌の引っ張る力もすごく、体重と同じぐらいは大丈夫なので、
体重65kgの僕が、65kgを舌で引っ張ることになります。

カメレオンは忍者?
カメレオンというと変幻自在に体の色を変え、
周りの景色に同化して身を隠す「隠れ身の術」を使う忍者のように思われています。
しかし、実際は色のバリエーションがたくさんあるわけでもなく、
見つかりにくくなる程度で、そんなにも色は変わりません。
真っ赤な箱に入れても真っ赤になりません。
アマガエルのほうが、色が変わりますよ。
カメレオンは周りの色を見て体の色を変化させているのではなく、
温度や光によって変化します。
皮膚が光の強弱を感じとると、
神経の働きにより皮膚の下にある色素細胞が反応し色がかわります。
更に驚くことに、感情によっても色をかえます。
怒ったり、恐怖を感じた時、求愛をする時も体の色がかわるのです。

もし僕がカメレオンだったとしたら、
おしゃれなバーのカウンター、
マイルス・デイヴィスの「カインド・オブ・ブルー」を聴きながら
バーボンを傾け、マスターとアドリブソロの素晴らしさを話している俺、
無垢の木でできたドアが開き、
ミディアムボブの髪に白いシャツ、そして黒タイトのスカートの女性が一人入ってきた。
俺の3つ隣のカウンターに座り、シャンパンベースのカクテル“ミモザ”を注文。
彼女が一杯目を飲み終えた時、
俺は渋めの低いトーンの声で話しかける。
「おひとりですか」
「よろしかったら、次のカクテル選ばせてくださいませんか?」
僕はマスターにジンベースの“アラスカ”を作ってもらう、
この淡い黄色が、アラスカの氷原の色なんですよ・・、うんちくを語る。
あくまでも渋く余裕のある大人の男の俺、
のはずが!
顔がすっかり“求愛色”に変わり、
下心丸出しの助平親父、
あ~カメレオンでなくてよかった。

“あいつ”のお食事が終わり、
病院の全ての電気が消える。
入院室の防音の扉を閉じられ、
水を動かすためのエアレーションの振動音だけが響いていた。
病院の明かりは保温用の赤外灯だけ、
あいつは暖をとるため赤外灯の下の枝でじっと動かない。
暗い院内で“あいつ”だけが弱い赤い光で照らされている。
それをずーと見ている無精ひげを生やした中年男。
僕のやすらぎは、バーでバーボンではなく、
病院の待合室、カメレオンの前で牛乳だった。



<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日
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