動物たちの不思議な生態の秘密
元動物園獣医師・ただいま五十三次どうぶつ病院獣医師、動物たちの不思議にせまります。
プロフィール

つきまるにゃん

Author:つきまるにゃん
生き物を飼うことが
大好きな獣医師です。
いろいろな生き物に
“咬まれ・蹴られ・踏まれ・刺され”
こんな経験から
動物達の不思議な生態にせまります。

フリーエリア
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
動物達の不思議な生態の秘密
リンクフリーです。
バナー
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR

2016.01.13_14:30


 羽鳥慎一のモーニングショー

正月早々、
テレビ朝日の“モーニングショーの『羽鳥真一』くん”から連絡あり、
兵庫県の西宮に現れ怪我をしたニホンザルについてたずねられました。
“羽鳥くん”のお願いならしょうがないと、
僕は怪我についてコメントをしました。

「2016年1月6日、兵庫県の西宮の市街地に今年の干支ニホンザルが現れ、
捕まえようと追いかけた時に、落下し怪我をしたもよう」
質問はどんな怪我をしたのか、今後どうしたらいいか。
映像でしか確認できないため、怪我の診断は難しいのですが、
推測できるのは、骨折・脱臼・捻挫 
あの高さからコンクリートの上に落下、
足の上げ方などから骨折もあり得ると思われました。

今後どうしたらいいかですが、
この容態でも捕獲は非常に難しいと思われ、
捕獲のために追い回すことにより、怪我が悪化する可能性がありました。
もしうまく捕獲できたとしても、治療がとっても難しいのが現実です。
治療には、まず診断のために麻酔をかける必要があります。
衰弱しているニホンザルの麻酔は、非常に危険をともないます。
そして、骨折をしていた場合、ギプス固定、もしくはピンを挿入する手術となります。
ギプス固定、できたとしてもギプスを噛み続けとってしまうことも、
ピンの挿入、縫合した傷口をいじって治すどころかもっとひどくなってしまいます。
その上、手術後の感染予防の注射は難しく、
野性のニホンザルが薬を飲んでくれることはほとんどありません。

動物園で飼育しているニホンザルが深い傷を負った治療を何度も行いましたが、
傷口を縫合しても、麻酔から醒めた途端その傷口をいじり、
傷口がぱっくり開いてしまい、治療前よりもひどいことになったことが何度も。
また治療のためには数日間狭いケージに閉じ込めなければなりません。
この状況がものすごいストレス、
ストレスのため自分の指を噛み切ってしまう個体もいます。
食欲もなくなり、胃腸炎、下痢に嘔吐、
怪我のためではなく、ストレスによる衰弱により死亡した個体もいました。
動物園の場所や人に馴れているニホンザルですら治療は困難でした。
ニホンザルの治療は、出血が止まっている、少しでも自力で動ける、
肺炎などの内臓的疾患がないなどの時は、
最小限の治療だけをおこないできるだけ早く仲間のもとに返しました。
命にかかわらない骨折の場合は痛み止めと感染防止の処置だけ行い群れにかえしました。
基本的に自分の力で治るのを期待します。

人に馴れているニホンザルですら、こんな状態ですから
野性のニホンザルをケージに閉じ込めての治療など難しいと思います。
実際、傷つき保護された野性のニホンザルを治療したことがありますが、
どんなに衰弱しても、治療するときは人間に攻撃してきます。
ストレスのためか自分で傷をいじり日に日に容態は悪化し、
亡くなってしまいました。
野性動物は動けるようなら
できるだけ早く仲間のもとに返すのが一番生きていける可能性があります。

今回の西宮のニホンザル、痛そうではありますが、
3本の足を使い移動できていたので、
捕獲して治療ではなくできるだけ早く、
餌のある山にかえすのが一番かなと思いました。

最近、野生動物の出没が増えているように感じます。
ニホンザル・ツキノワグマ・ニホンシカ・ハクビシン・
アライグマ・イノシシなどなど
もしかしたら、動物たちが増えているの?
確かにニホンシカ・ハクビシン・イノシシなど一部の動物たちは増えています。
しかし、ニホンカワウソ・ニホンオオカミなどは絶滅、
ヤマネ・コノハズク・ライチョウ減っています。
増えている動物と、減っている動物の違いは、
人間生活にうまく共存している動物、
人間の作った作物・ごみを餌としたり、
人間の手によって天敵が絶滅した種などの動物は増えています。
逆に人間の生活により生息する場所が減った、
餌となるものが減った、
生息地に人間により天敵(外来生物)が持ち込まれた
などの動物は減っています。
人間によって持ち込まれたハトを餌としたオオタカは増え、
人間による狩猟、農薬の使用、生息地の開発にあったトキは絶滅しました。

自然は強い、人口の減により放置された田畑はほんの数年で森に変わります。
日本の田舎ではどんどん森が増えている感じがします。
そしてそこでは、一部の生き物も増えています。
ただし、急激にできた森には、多様性がなく痩せた森です。
多様性のある豊かな森には、
たくさんの種の植物が育ち、
たくさんの種の生き物が生息しています。
そのような森になるには、何十年何百年何千年かかります。
何万年かけて出来上がった熱帯雨林には何万種類の生き物が生息し、
何万種類もの植物が育っています。
多様性があり非常に豊かな完結した世界です。
地球全体に見ると人間生活により森は失われ、
川・湖・海は汚染され、
そこに生息している生き物がものすごいスピードで消えていっています。
人間は何万年かかってできた熱帯雨林も破壊してしまいました。
一部の生き物(人間)だけが増え多様性が失われた地球は病んでいます。
西宮のニホンザルからいろいろなことを考えさせられました。


ごめんなさい、新年早々
『嘘』を書きました。
羽鳥慎一のモーニングショーにコメントで僕がでたのは本当ですが、
羽鳥アナウンサーとは全く面識はありません。
ディレクターからの連絡でした。
『羽鳥さん』とは知り合いの振りをしただけです。

<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日

 
  2月7日(日)の午前中 北澤院長は研修会出席のため不在となります。
  午前中の診療は研修獣医師が対応します。
  午後からは通常診療します。 
  今後  3/6(日)の午前中も
  院長研修会出席となります。 

  ★ もう一つのお知らせ

  辰巳出版の 日本犬専門マガジン!
  Shi-Ba(シーバ) 
  に連載始めました。
 “毎日事件発生!? マニアな視点で診察中
  北澤先生のおもしろ動物病院”
 
 本屋さんで見つけたら読んでください。

スポンサーサイト

2016.01.07_16:15

“申”


2016年1月1日、
ちょっと早起きした僕、
菅平の山々から昇る初日の出を、拝むことができました。 
陽の光は一面の雪をキラキラ輝かせるのですが、
今年は違いました。
春のような暖かさで迎えた新年、まったく雪はありません。
楽ではあるが“なんか、さみしい”・・。
冬眠しているはずの熊が起きていたというニュースも・・・。
僕のこの時期の楽しみ、新雪についた動物たちの足跡探しもできません。
シベリアから越冬のためにやってくる安曇野の“コハクチョウ”を見にいくと
一カ所に十数羽いるだけ、本当なら数百羽が越冬のためいるはずなのに・・。
地球全体が暖かくなっているため・・?
わざわざ遠い長野県まで来なくても暖かいので途中で降りてしまった様子。
2016年は異常なくらい暖かいお正月でした。
今年の干支は「申」
ニホンザルを見るのは冬がいちばん。
お顔とおしりが真っ赤になり、
冬毛が生えそろいモコモコ、
とってもかわいく美しい。
ということでニホンザルを見ようと、
ニホンザルが温泉で入ることで有名な地獄谷野猿公苑へ、
いつもなら雪景色の中の温泉のはずなのに、
ここも雪が少し残っている程度、
この時期は雪の中で温泉に入る姿が見たいのに。

★ニホンザル
世界中にいる約180種のサルは、ほとんどは暖かいところに生息しています。
雪の降るような寒いところに生息しているサルはニホンザルだけ、
最も北に生息する、日本にしかいない固有種です。
海外では“スノーモンキー”として有名です。
数頭の大人オス、その数倍の大人メス、その子供たちからなる群れで暮らしています。
メスは一生、生まれた群れで過ごしますが、オスは大人になると群れを出ていきます。
このサルはハネレザルとして単独で行動します。
茶臼山動物園にもこのハナレザルがやってきたことがありました。
サル山の観客がニホンザルという不思議な光景となりました。
この時困るのが、果たして本当に野生のニホンザルなのか、
もしかしたら逃げた子なのか?わからないことです。
確認をすることになります。
全職員に召集がかかり、それぞれが手にスコップ・雪かき・棒などをもちサル山に入ります。
サルたちは何事かと大騒ぎ、ギャーギャー叫びながら走り出します。
なぜかいつも左回り、回るだけならいいのですが、
パニックのためオシッコや糞をまき散らします。
全頭を治療用の部屋に追い込み、1頭ずつ外に出しながら頭数確認、まあ大変でした。
たまに、野生のハナレザルが群れを気に入ったのかサル山に飛び込むことも、
しかし、外から入ったオスはたいてい大人オスたちに攻撃され大けが、
時には命を落とすことも。

日本人はサルのお尻と顔を赤く描きますが、
赤いお尻のサルは、ほんの数種しかいません。
顔とおしりが赤いサルとなるとニホンザルしかいません。
そして、この赤は秋から冬の繁殖期にはいっそう鮮やかになります。
特に雄ザルは、お尻というよりもタマタマ(陰嚢)が真っ赤になり目立ちます。
この赤は皮膚の色ではなく、
皮膚の下の毛細血管の色が透けて見えるため赤く見えるのです。
繁殖期になり、性ホルモンが分泌されると血流が増して真っ赤になるのです。
逆に体調が悪いときは、色が薄くなります。
体調を崩し入院していたニホンザルは青白い顔をしていました。

「ボスザルはどれ?」
餌を付けると、いっせいにサルたちが集まってきて、両手で餌をかき集め始めます。
すると、筋骨隆々で体が大きく尾を上にピンとたて
1位(ボス)が悠々とゆっくり近づいてきます。
すると、餌を集めていたサルたちは、さっと場所を明け渡します。
ボスはどんと餌の真ん中に座り込みゆっくりと好きなものだけ思う存分食べます。
お気に入りのメスと子どもだけは近づいて一緒に食べることができます。
順位の低いサルは、餌がまかれるとともにできるだけ素早くかき集め、
順位の高いサルが来る前に、入るだけ口に詰め、さらに両手で抱え込み、
2足歩行で安全な場所まで運びます。
しかし、餌が少なかった時など、順位の低いサルは高いサルに口を無理やり手で開けられ、頬袋にため込んだ餌を奪いとられることもあります。
ケンカにより、頬に穴が開いたサルがいました。
このサルは順位が低いため、口の中に餌を詰め込む必要がありますが、
その穴から餌がこぼれ落ちていました。
本人は焦ってつめこんでいるためそのことにまったく気が付いていませんでした。
ボスはたくさんの好みの♀と交尾し、♀を独占すると考えられていましたが、
DNAを調べてみるとボスの子は意外に少なかったことがわかりました。
弱い♂もすきをみて、交尾するし♀もそれを受け入れている現実がわかりました。
動物園などで飼われているニホンザルは、豊富な餌があるため餌を探し回る必要がなく
のん気で楽だと思われがちですが、そんなことはありません。
限られた空間で、その上過密のことが多く、ささいなことによる個体間の争いが多いうえ、
にげる場所がないなど、力関係による順位は野生の群れよりずっとシビアな生活環境です。
ボスになるためには、自分の力だけではなく、♀の力が必要です。
より強い♀の一族がバックにつくことにより、一層地位が安定します。
逆にいくら大きく、力が強くとも♀の支持が得られなければ、
高い地位にいることができません。

サル山は人間社会の縮図
閉鎖された群れ社会で一番になり、威張っているボス。
いざとなると、一番最初に逃げて行くこともあります。
どこかの誰かのよう。

戦えば強いのに、他のサルとは群れず、
いつもみんなとちょっと離れたところで過ごすクールなやつ。

いつもボスのそばでペコペコし、グルーミング(毛づくろい)してボスの機嫌をとり、
権力のおこぼれに預かっているサル。

ボスを上手に操るメスのサル。

さる山を観察していると自分の姿を見ているようで、ちょっと悲しい。

みんながイメージするボスザルは
外敵から群れを守り、喧嘩を仲裁し、餌をみんなに分け与え、
みんなに信頼され1目置かれている。
そんなリーダーのようなサルはいません。
1番強いということだけ、
心配りなどせず、餌を見れば1番に食べ、お気に入りの♀がいれば交尾をする、
ただ力の強さから威張っているだけです。

野生では、餌が広範囲にあるため一人で独占は無理だし、
自由に広い範囲を動いている♀を独占することも難しいので、
順位自体も飼育下よりずっと曖昧です。
今までなぜリーダー的役割のボスがいると言われていたのか、
これは人間がつくりあげた幻想でした。
本当は力に任せ威張っていただけでした。
こんなリーダーがいたらいいなという勝手な思い込みが、
サル山のボス像をつくりあげていました。

・クーデター
長年さる山でボスだった個体が、年の為犬歯が抜け落ちた時、
今までこのボスのもとで地位を築いていたNO2とNO4が手を組み、
クーデターを起こしました。
僕たちが気づいた時には、体中に無数の噛み傷があり、
指は何本か噛み切られ、顔が腫れあがっていました。
いそいで捕まえ治療をしたところ、運がよく傷は大きな血管を避けていました。
命にかかわるようなケガはありませんでした。
しかし、翌日の朝には死んでいました。
ケガで死んだというより、クーデターによるショック、
NO1からの転落による精神的なショックが
生きていこうという気持ちを奪い取ってしまいました。
このクーデターの裏には♀が暗躍していたという噂がありました。

ニホンザルは賑やか
サルは視覚からの情報がとっても大事。
怒ったり、喜んだり、幸せの顔など表情が豊か、
態度も尻尾をたてたり、腰を低い、
手をもみてのようにして歩いたり、態度もバラエティがあります。
相手の表情や態度から気分を読み取っています。
声も豊富なバリエーションがあります。
危険の時の警戒音 ホッホッ。
悲鳴 ヒェ~ 様々な声を出します。
サル山は動物園で一番賑やかです。
今年はニホンザルを見に動物園に行って見てはいかがですか。
お気に入りの個体を見つけ、まずそのこの表情を楽しみ、
その後そのこの、仲がいいこ、仲の悪いこ、そのこの地位など
サル関係をみるととっても楽しいです。
特に餌の時間にサル山を見るととっても楽しいですよ。





<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日

 
  1月10日(日)の午前中 北澤院長は研修会出席のため不在となります。
  午前中の診療は研修獣医師が対応します。
  午後からは通常診療します。 
 
  今後   2/7(日) 3/6(日)の午前中も
  院長研修会出席となります。 

  ★ もう一つのお知らせ

  辰巳出版の 日本犬専門マガジン!
  Shi-Ba(シーバ) 
  に連載始めました。
 “毎日事件発生!? マニアな視点で診察中
  北澤先生のおもしろ動物病院”
 
 本屋さんで見つけたら読んでください。