動物たちの不思議な生態の秘密
元動物園獣医師・ただいま五十三次どうぶつ病院獣医師、動物たちの不思議にせまります。
プロフィール

つきまるにゃん

Author:つきまるにゃん
生き物を飼うことが
大好きな獣医師です。
いろいろな生き物に
“咬まれ・蹴られ・踏まれ・刺され”
こんな経験から
動物達の不思議な生態にせまります。

フリーエリア
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
動物達の不思議な生態の秘密
リンクフリーです。
バナー
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR

2015.01.28_18:07

生態を知ろう

エボシカメレオンの“エボ吉”は、病院にもすっかり慣れ、
葉っぱの陰からでて、紫外線のライトの下で 
ぼーっと日向ぼっこをしていることがおおくなりました。

木々の間から差し込む光が森中を照らし始めると、
鳥たちのさえずりが始まります。
その声とともに目を覚ましたカメレオンは、
陽の当たる場所を求め木の枝をゆっくりと移動、
太陽の光はカメレオンの体を温め、
体温の上がると、枝から枝へと餌となる虫を求め動きまわります。
お腹いっぱいになると再びお昼寝。
日中はこれを繰り返します。
夕方になると雲に覆われ一気に森が暗くなり、
“ポツポツ”と水滴が落ちてきます。
その水滴が“ザーザー”にかわりスコールが始まります。
その空からの恵みで喉を潤すと、
お気に入りの木陰に戻り、翌朝の太陽がでるまで睡眠
これがカメレオンの森での一日です。
カメレオンに心地よく生活してもらうため、
飼育下でもできるだけこの状態を再現するようにしています。


この環境の再現のため、
「ストレス」「飼育温度」「紫外線」「水」に注意しています。
ストレス:恥ずかしがり屋なので、いつも見られていると、とってもストレスを感じます.
必ず隠れる場所を用意が必要です。
“エボ吉”は思ったより大胆で、皆に見られても結構平気なようです。
紫外線 :カメレオンは日光浴が大好き。
太陽の光には7色の光が混ざっています。
光によってそれぞれ波長の違いがあり、
生き物に対しての影響が異なります。
食欲が増したり、脱皮を促進するもの、カルシウムを吸収させるもの、
細胞を破壊したり、日焼けをさせたりするものもあります。
しかし、室内で飼育していると太陽の光を浴びる機会がありません。
太陽光を浴びないとカルシウムの吸収ができないなど、
病気になってしまいます。
そこで太陽光の変わりに、紫外線を放射するライトが必要です。
水   :カメレオンは木の上で生活していて、
木の上にはたまった水がほとんどないため
動かない水は水と認識していません。
スコールの後の雫のように動いていることによって初めて水と認識します。
その為、水をのんでもらうためには工夫が必要。
いろいろな方法がありますが、
エボ吉は、水をエアレーションによりブクブク動かすことにより
水を飲んでくれます。
飼育温度:寒がりなので暖かい場所を用意します。
暑すぎてもだめなため、暖かい場所と涼しい場所をつくります。
僕はエアコンと赤外灯を用意しています。
暗く静かなところで寝るため、
普通の保温球では明るすぎて安心して眠ることができません。
カメレオンは赤い光は見えないため赤外灯を使用して、
ホットスポットを作ります。

僕はいろいろな生き物を飼育することが大好き。
飼育に当たり一番大事にしているのは、
本来生息している環境と野性下での生態です。
その環境に近づけることがストレスを少なくして、長生きのコツです。
カメレオンの水を動かす
ハクバサンショウウオには水の流れを作る、
昼行性の鳥は、夜暗く静かにする、
オランウータンには木の上の枝で作ったベットのかわり、
ハンモックを作ってあげる、
ツキノワグマもハンモックが大好き、
ネコちゃんには高い場所に安心する場所を作ってあげる、
ワンちゃんには僕たち人間が群れの仲間になってあげる、
ワンちゃんが散歩を好きなのも生態を考えると当然のこと、
ワンちゃんの先祖は、群れの仲間とあちこちと歩きながら獲物を探し、
獲物が見つかるとリーダーの指示のもとみんなで協力して狩りをしていました。
散歩は獲物を求めて歩き回った本能なのです。
リーダーが飼い主になるか、もしくはワンちゃんがなるかは飼い主次第です。
ネコは待ち伏せ型の狩りのため、
獲物(餌)が確保できるテリトリー(部屋)があれば満足します。
散歩の必要がありません

ただ一つ、我が家には生態が全く分からない生き物がいます。
この生き物は貢物が大好き、
他の生き物の話を聞かない、
他の生き物の活動を監視し、厳しい行動制限をする、
他の生き物が悪い行動をとった時は厳しい罰を与える、
自分の行動にたいしてはとても寛容、
甘いものが大好き、
キラキラ光るものをつけたがる、
顔にペインティングをして本当の顔を見せたがらない、
体に液体をかけ自分の匂いを隠す
やたら口が達者、
いつも僕のことを疑っている、
僕に小遣いを少ししかくれない、
電話を途中で切ると怒る、
メールの返事をしないと怒る、
僕のメールは読まない時がある、
外食時「何食べる」と聞くと「何でもいいよ」というのに、
いざ僕の食べたい店に入ると必ず「その店の悪口」を言う。
昨年のクリスマスのプレゼントを買う暇がなく年をこしてしまった時、
いつ爆発するかと恐れていた僕に彼女は、
優しく笑顔で、
「“口紅”がほしいの大体4000円ぐらいのちょっといいやつ」
この値段で住むのだったらラッキーと、
一緒に買い物に行くことに、
口紅が決まった後、
お店の綺麗なお姉さんがひと言「他には何か・・・。」
言い終わる前に謎の製品名を告げる妻、
綺麗なお姉さんはすぐにその製品をもってきて
「こちらでよろしいでしょうか」
言い終わると同時にすでに首に着けているではないか、
「やはりこちらのほうがお似合いですですね」
おかしい初めて来たはずなのに、“こちらのほうが”はおかしい。
どうも下見に来て何点か見て選んでいた。
「これで決めるは」
「奥様はセンスがおありですね」
僕にお姉さんは優しい笑顔で話しかける。
そして、妻に向かって
「他に・・・」
「今日はこれだけです」大声でいう僕、
謎の生き物“奥さん”、
僕の生態を知り尽くし、僕は飼育されているのでした。




<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日

スポンサーサイト

2015.01.11_14:13
バーでバーボン

2015年1月 診察を終え、
ラジオを止め、明かりを暗くし、待合室でぼ~っとしている僕に、
少し外に飛び出た左右の目をバラバラに動かしながら、
音もなく、ゆっくりと“あいつ”近づいてくる。
僕は手に黒い物体をそっと乗せる。
“あいつ”は、20cmほど近づいて身体の動きを止め気配を消した。
目だけは左右バラバラに動かしている、
キョロキョロと動かしていた左目が僕の手の上の小さい黒い物体を見つけた、
バラバラの方向を見ていた左右の目が両方とも手の上の物体に向く、
するどい?眼光は、手の上の黒く光る小さな生き物を『ロックオン』
手の上の生き物が僕の手から逃げようと動いた、
その瞬間“あいつ”の口から、ものすごいスピードで長い舌が飛び出し、
舌の先で手の上に乗っていた“コオロギ”を捕らえ、
また、ものすごいスピードで“コオロギ”とともに口の中にもどっていった。
新しい年を迎え僕は新しい相棒を手に入れた。
“あいつ”は『エボシカメレオン』

僕が初めてカメレオンを見たのは中学生の時、
くるくる巻いた尻尾、
左右バラバラにキョロキョロ動く目、
緑と赤と黄色の体色
その色が環境により変わる、
長く伸びる舌、
この時の僕はこの生き物は「小さい怪獣」だと、
いつか戦ってみたい、いやいや飼ってみたいと思いました。

どこを見ているの?
丸く外に突き出した目をカメレオンは、
自由自在に前後上下にキョロキョロと動かします。
それも左右違う方向を向きます。
ということは、左右で違う物を見ていることに、
全く異なる2つの画像が、頭の中に浮かんでいるということになります。
この目のおかげで、ほぼ360度、頭を動かさず、
獲物を捜すことができます。
獲物を見つけると、今度は両目でその獲物を捉え、距離を測ります。
そしてものすごいスピードでハンティング。
この目はレンズの曲率を自由に変え拡大してみるという
望遠レンズのような機能もそなえており、
その視力は30m先まで見通せると言われています。

舌でハンティング
ライオン、トラ、ワニは鋭い歯、
鷹は爪で獲物を捕まえます。
ゾウは鼻、キリンはキックと首、馬はキックと歯で戦います。
そして、カメレオンは舌でハンティングします。
カメレオンはあの長い舌は丸く口の中にしまい込んでいるわけではありません。
舌の根本に舌骨という骨があり、
その周りに縮んだバネのように舌がついています。
舌骨は筋肉で喉の奥にひっぱられており、
この筋肉が弓の役割で、舌骨が矢となります。
獲物を見つけると矢が放たれるように舌が飛んでいきます。
舌の先から強力な粘液をだし獲物をくっつけてとらえると、
あっという間に口の中にもどします。
舌を発射し、口の中に戻るまでわずか20分の1秒、
目にもとまらぬ速さです。
舌の長さは体長の1.5倍ほどあります。
僕の身長は165cmなので、
僕がカメレオンだったとしたら、
2.475mの舌を持つことになります。
舌の引っ張る力もすごく、体重と同じぐらいは大丈夫なので、
体重65kgの僕が、65kgを舌で引っ張ることになります。

カメレオンは忍者?
カメレオンというと変幻自在に体の色を変え、
周りの景色に同化して身を隠す「隠れ身の術」を使う忍者のように思われています。
しかし、実際は色のバリエーションがたくさんあるわけでもなく、
見つかりにくくなる程度で、そんなにも色は変わりません。
真っ赤な箱に入れても真っ赤になりません。
アマガエルのほうが、色が変わりますよ。
カメレオンは周りの色を見て体の色を変化させているのではなく、
温度や光によって変化します。
皮膚が光の強弱を感じとると、
神経の働きにより皮膚の下にある色素細胞が反応し色がかわります。
更に驚くことに、感情によっても色をかえます。
怒ったり、恐怖を感じた時、求愛をする時も体の色がかわるのです。

もし僕がカメレオンだったとしたら、
おしゃれなバーのカウンター、
マイルス・デイヴィスの「カインド・オブ・ブルー」を聴きながら
バーボンを傾け、マスターとアドリブソロの素晴らしさを話している俺、
無垢の木でできたドアが開き、
ミディアムボブの髪に白いシャツ、そして黒タイトのスカートの女性が一人入ってきた。
俺の3つ隣のカウンターに座り、シャンパンベースのカクテル“ミモザ”を注文。
彼女が一杯目を飲み終えた時、
俺は渋めの低いトーンの声で話しかける。
「おひとりですか」
「よろしかったら、次のカクテル選ばせてくださいませんか?」
僕はマスターにジンベースの“アラスカ”を作ってもらう、
この淡い黄色が、アラスカの氷原の色なんですよ・・、うんちくを語る。
あくまでも渋く余裕のある大人の男の俺、
のはずが!
顔がすっかり“求愛色”に変わり、
下心丸出しの助平親父、
あ~カメレオンでなくてよかった。

“あいつ”のお食事が終わり、
病院の全ての電気が消える。
入院室の防音の扉を閉じられ、
水を動かすためのエアレーションの振動音だけが響いていた。
病院の明かりは保温用の赤外灯だけ、
あいつは暖をとるため赤外灯の下の枝でじっと動かない。
暗い院内で“あいつ”だけが弱い赤い光で照らされている。
それをずーと見ている無精ひげを生やした中年男。
僕のやすらぎは、バーでバーボンではなく、
病院の待合室、カメレオンの前で牛乳だった。



<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日