動物たちの不思議な生態の秘密
元動物園獣医師・ただいま五十三次どうぶつ病院獣医師、動物たちの不思議にせまります。
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つきまるにゃん

Author:つきまるにゃん
生き物を飼うことが
大好きな獣医師です。
いろいろな生き物に
“咬まれ・蹴られ・踏まれ・刺され”
こんな経験から
動物達の不思議な生態にせまります。

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動物達の不思議な生態の秘密
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2014.07.24_10:32


吸血?

「・・・・・ピチ ピチ ピチ ピチ プチ プチ」
僕は月明かりの棚田の上を自由に飛び回る
 “生き物” の声を聞いていました。
「ピチピチピチピチピチピチ」
危ない、その生き物がすごいスピードで僕に向かってきました。
僕はすかさず頭を下げ、彼らの攻撃から間一髪のがれることができました。
声の主は “コウモリ”
危うく首元に噛みつかれ「血」を吸われるところでした。

いやいやそんなことはありません。
僕が聞いていた声の主は “アブラコウモリ” 血は吸いません。
人間を襲うことは決してありません。
蚊やユスリカ・蛾などの虫を食べます。
昆虫を求めて空を飛んでいたのでした。
コウモリというと「吸血」というイメージがありますが、
実際「血」を餌にしているコウモリは、
世界中に生息しているコウモリ約1100種のうち、
“ナミチスイコウモリ”“ ”シロチスイコウモリ”“ ”アシチスイコウモリ“
の『3種類』だけです。
他のコウモリの70%は虫を食べています。
日本にいるコウモリも、
小笠原と南西諸島にいる2種類のオオコウモリ以外は虫を食べています。
吸血コウモリは日本にはいません。
血と虫以外としては、フルーツを食べるコウモリもいます。
またウオクイコウモリの名の通り魚を食べるもの、
カエル・トカゲ・鳥・ネズミを食べる種もいます。

コウモリは鳥?
コウモリは鳥ではなく僕たち人間と同じ哺乳類です。
哺乳類で唯一飛ぶことのできる生き物です。
モモンガやムササビだって飛ぶのでは
いやいや彼らは木から木へ飛び移る滑空するだけで、
コウモリのように羽ばたいて飛ぶことは出来ません。
哺乳類のコウモリは飛ぶために特殊な進化をしました。
飛ぶために大事なことは体が軽いこと、
鳥は体を軽くするために骨の中身をスカスカにしました。
コウモリはどうしたかというと骨をスカスカするかわりに、
足の筋肉をなくしてしまいました。
コウモリの足は骨と被膜だけです。
手の親指以外の4本の指はとっても長くその間の被膜があり、
その被膜が足までつながって翼となっています。
被膜は胸の筋肉を使い羽ばたくことができ飛べるのです。
しかし、体を軽くするために筋肉をなくしたため、
歩くことができなくなりました。
歩くことどころか立つこともままならず、
立つこともやめ、ぶら下がることにしました。
コウモリは飛ぶために、立つことをやめ「さかさま」になったのです。

なぜ暗闇でもぶつからないの?
「・・・・・ピチ ピチ ピチ ピチ プチ プチ」
実は僕が聞いていたのは正確にいうと声ではありません。
ピチ ピチ は、
彼らが口から発していた超音波です。
彼らは、自分で発した超音波が跳ね返ってくる反響音を大きな耳で聴き取り、
餌や障害物の位置を知るのです。
超音波を出すことによって暗闇で飛ぶことができるのです。
この超音波でお互いにコミニュケーションをとっているとも言われています。
ちなみに超音波は人間には聞こえません。
なぜ、僕に聞こえるかというと、
僕が特殊な耳を持っている、というわけではなく、
「バット・ディテクター」という
コウモリの超音波を聞くことのできる装置をもっているのです。
この機械を使うと
「ピチ ピチ ピチ ピチ プチ プチ」超音波を聞くことができます。
そして、コウモリが近づいてくると「ピチピチピチピチ」早くなります。
コウモリ以外でも
クマも超音波を出します。
クマは他の個体の超音波を察知すると、
弱いほうが立ち去るなどして無駄な接触を避けトラブルを未然に防いでいます。
歩きながら口をとがらせているのは超音波を出しているのです。

僕はこのアブラコウモリのあかちゃんを育てたことがあります。
親が亡くなってしまったため、保護された赤ちゃんです。
最初は注射筒でミルクを3時間おきに与えました。
ちょっとでも多く、口の中に入れると
ゴボッと鼻からミルクを出してしまいます。
ほんの少しのミルクをゆっくりと時間をかけて与えました。
何とか大きくなっても、
今度は離乳が難しい。
餌はミルワームという虫。
皮は堅く、皮ごとあたえるとすぐ便秘をして死んでしまうため、
内臓だけを絞り出し与えます。
口に入れると“くちゃくちゃ”と音をたてながら食べます。
名前は「クチャ」でした。
時々蛾やバッタもあたえました。
食べている「クチャ」の顔を近くで見ていると
カワイイというより、
鼻はつぶれ、耳だけが大きく、鋭い歯
そして“くちゃくちゃ”食べている様子は、
怪獣の赤ちゃんを育てている気分でした。

コウモリは大食漢
アブラコウモリは1晩で体重の1/2の虫を食べます。
体重65kgの僕にたとえたら1日で32.5kgも食べることになります。
一日500匹もの蚊を食べてくれます。
コウモリは蚊を食べてくれるありがたい生き物なのです。
昔は福を呼ぶ演技のいい生き物でした。
しかし、吸血鬼ドラキュラがはやったため、
恐ろしい生き物のイメージがついてしまいました。

哺乳類なのに飛ぶことができる
超音波で会話をする
ぶら下がって「さかさま」で寝る
血を吸って生きるものもいる
身近にいるのにあまり知られていない不思議な生き物
それがコウモリです。

水が張られ青々とした稲が生えた田んぼ、
カエルの声をバックコーラスに、
アブラコウモリが出す超音波を聞きながら、
月明かりの中コウモリたちの姿を見るのがこの時期の楽しみ。


<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日

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2014.07.05_10:24

マグマと杏


ピチピチピチピチピチピチ・・・。
「あちっ」
僕の腕に、鍋から飛び出た液体が!
大鍋の中は噴火口のマグマのような状態。
そのマグマが僕の腕に。
僕は鍋の噴火を抑えるためにマグマを必死にかき回します。
マグマは“杏”。
僕は杏ジャムを作っていたのでした。
木で完熟した杏の実を収穫し、
大きな鍋で大量のジャムをつくっていたのです。
鍋の杏がマグマのようにならないと美味しいジャムになりません。
ジャム作りはやけどとの戦いです。
梅雨のこの時期が杏の収穫。
杏はすぐに腐ってしまうため、
杏が熟すとどんな大事な用事があろうとも、
ジャム作りが優先です。
今年もたくさんの杏を収穫し大鍋でジャムをつくりました。

杏

杏はバラ科サクラ属の一種で、
4000年以上前から栽培されています。
ビタミンやミネラル・食物繊維などが豊富で、
昔は食用というよりも薬用として栽培されていました。
現在も、鎮咳・去痰・緩下などの薬効があり
漢方薬として利用されています。
杏と僕の出会いは、
小学校の下校の途中にあった大きな木、
6月になりピンポン玉ぐらいの青い実がオレンジ色に変わると、
友達に肩車をしてもらい採り、毎日味を確かめながら帰りました。
最初は酸っぱい実が日に日に甘味が出てきます。
地面にポトポト落ち始めたぐらいが完熟、
酸っぱさの中に甘味がのり、とっても美味しくなります。
そうなるとポケットいっぱいに詰め込み、
ランドセルにまで詰め、
口いっぱいに頬張りながら家に帰ります。
その結果、ポケットは熟してつぶれた杏の汁でベタベタ、
ランドセルの中も恐ろしい状態になって、
母に怒られました。
そのうえ、繊維質が多く緩下作用のある杏、
おバカな僕は必ず食べ過ぎによる下痢をしました。
杏は便秘予防や治療にききますが、
食べ過ぎると下痢、
身をもって知りました。

猫の便秘
猫の祖先は砂漠で生活したため、
水を飲む量が少なくても生きていけます。
高齢になったり、太ったりし動くのが面倒なると、
いっそう水分を摂りません。
そのため水分のない固いうんちになります。
そのうえ体を動かさないため、胃腸の動きもわるくなり、
便秘になりやすいのです。
たかが便秘と侮っては行けません。
猫ちゃんはとっても苦しいうえに、
最悪の場合は命にかかわります。
便秘は急になるわけではありません。
トイレの掃除が減ってきたら要注意。
これは、便の量が減ったこと。
以前は長く太く艶があったのが、短くコロコロした便に変わってきた。
何度もトイレに行く、トイレの時間が長い。
うんちをしながら鳴き声を上げる。
などは便秘のサイン。
10歳以上の高齢・あまり水を飲まない・肥満・あまり動かない
このような猫ちゃんは便秘になりやすいので要注意です。
また、長毛やあまりブラッシングをさせない猫は、
毛繕いの時、毛を飲み込んでしまいお腹のなかに毛の塊ができ、
それが詰まることによる便秘の毛球症になってしまうことがあります。
便秘の予防は、
繊維質の多いフードを与え・太らせず・水をたくさん飲める環境・
適度な運動をさせ・まめなブラッシングです。
便秘の治療は便秘の状態を改善させるだけで、
根本的な治療は飼育方法の改善(予防)しかありません。
便秘の時、杏もいいのですが、猫ちゃんは肉食です。
便秘にとっても効果あるフードがありますので動物病院に相談してみてください。

鍋で煮ること1.5時間、
腕と顔をやけどしながらジャムが出来上がりました。
滅菌したビンに入れた杏ジャム、とっても美しく大満足。
大鍋を洗い、コンロに飛び散ったジャムをふき取り、
僕は完璧なジャム作りを終えました。
大量にビン詰めのジャムを眺めながら、
綺麗になったキッチンでおいしいコーヒーを入れ、
冷たいバニラのアイスに、
まだ熱々のたっぷりな杏ジャムをかけ食べました。
“おいしい” 
最高の贅沢です。
ジャム作りの苦労が報われる瞬間です。

しあわせな時間を過ごしていると、
「ただいま」うちの奥さんが帰ってきました。
「今ね、おいしそうな完熟の“杏”たくさんもらったの」
手に持った大きなバケツの中には大量の杏。
すぐ腐っちゃうから、今日中にジャムにしといてね。
今日は寝れないのか





<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日