動物たちの不思議な生態の秘密
元動物園獣医師・ただいま五十三次どうぶつ病院獣医師、動物たちの不思議にせまります。
プロフィール

Author:つきまるにゃん
生き物を飼うことが
大好きな獣医師です。
いろいろな生き物に
“咬まれ・蹴られ・踏まれ・刺され”
こんな経験から
動物達の不思議な生態にせまります。

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動物達の不思議な生態の秘密
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2014.03.13_10:20

花粉症と寄生虫

「アニー、おはよう」
アニーの部屋の前で、僕は彼女を呼びます。
彼女は眠そうな目をこすりながら、
布団代わりにわたしてある麻袋をもって僕の前にきました。
鉄の棒でできたドアのすきまからその麻袋を外に出して僕に渡します。
受け取った麻袋はまた夜使うため、僕が天日干しをしておきます。
「アニー背中見せて」
アニーは背中を僕に見せます。
腰のあたりの毛が抜けて、地肌が赤く所々に掻き傷が残っています。
僕は薄く軟膏を塗ってあげます。
「お尻見せて」
これは発情の確認、
発情中は陰部が風船のようにピンクに腫れ上がります。
「今度は右手だして」
彼女は振り向いて鉄の棒の間から右手を出します。
冬の間のアカギレはすっかり良くなっていました。
しかし、腕は全体的に真っ赤で激しく掻いたのか、傷だらけ、
左腕も両足の太ももも同じ、
順番に優しく軟膏を塗ってあげます。
「顔見せて」
カピカピに張り付いた鼻水は鼻の穴を塞ぎ、
常に口を開けっぱなしで呼吸しています。
瞼も赤く腫れ上がっていました。

体の健康チェックを終えると、
痒み止めの薬を口の中に投げ込み、
それと一緒にスプーンでヨーグルトを与えました。
春になると毎年この繰り返しでした。

アニーは僕が動物園に勤務して初めて担当したチンパンジーの女の子です。
彼女はアレルギー体質で、特に花粉の季節はひどい状態でした。

同じ時期になると二ホンザルの中にも何頭かが
鼻水を垂らし、目を腫らし、くしゃみをしています。
花粉症です。

以前は人間以外には花粉症はないと言われていました。
人間も僕が子供の頃には花粉症なんて聞いたことがありませんでした。
しかし、最近はチンパンジーやニホンザルにも花粉症があります。

なんで最近花粉症がでるようになったの?
要因の一つとして、寄生虫が関与している説があります。
アフリカからやってきたチンパンジーを、
寄生虫がいたため、駆虫薬を使いすべて退治したところ
花粉によるアレルギーが発症したそうです。
また、ニホンザルも寄生虫の駆虫をしてから
花粉症が発症したことを
動物園獣医師の勉強会で聞いたことがあります。

花粉症は、
体内に花粉が入ると、
体は花粉を敵とみなし、
その花粉に対するための抗体をつくります。
この抗体が体の中にある肥満細胞にくっつくと、
肥満細胞から様々な化学伝達物質がばら撒かれます。
ばら撒かれたこの物質は、鼻水、くしゃみなど、
いろいろなアレルギー症状を引き起こします。

※肥満細胞は免疫などの生体防御の役割を持つ細胞で、
けっして太った人だけにある細胞ではなく、
 痩せた人ももっていて、太ることに関与するわけではなく、
この細胞自体が太っているためこんな名前になりました。

寄生虫と花粉症?
寄生虫がいるチンパンジーは花粉ではなく
寄生虫に対しての抗体を大量にもっています。
寄生虫がすごいのは、自分の身を守るため、
本来寄生虫をやっつけるためにつくられたはずのこの抗体を、
寄生虫を攻撃しない“特別な抗体”に変えてしまったのです。
この“特別な抗体”が体内に大量にあるため、
体内に花粉が入っても抗体をつくる余裕がありません。
もし、花粉の抗体がつくられても
今度は肥満細胞には
寄生虫に対して作られている“特別な抗体”がびっしりくっついていて、
花粉の抗体がくっつく場所がないのです。
体は寄生虫がいるとそれを退治することに一生懸命で、
花粉ごときを相手にできないため、
花粉がはいってきていてもなんの反応も起こさないのです。
寄生虫が体のなかにいると花粉症にならないのです。
ただこれは一つの要因にすぎず、
花粉症が増えた原因は他にもたくさんあります

さてチンパンジーやニホンザルを飼っている人はほとんどいないのでいいのですが、
病院には花粉の時期になると、
口や目の周りを腫らしたワンちゃんがきます。
この時期以外は全く症状がないことから花粉症が疑われます。
犬や猫にも最近花粉症が増えてきたように思われます。
これも寄生虫がいなくなったことも要因の一つと考えられます。

犬や猫の花粉症の症状は、
人間で一般的な症状の「くしゃみ・鼻水・鼻づまり」は少なく、
足やお腹、口及び目の周り、耳などの痒みなどの皮膚症状が多いです。
花粉の時期に体をしきりに掻く、
目が腫れぼったいなどは花粉症の疑いありです。

犬や猫が花粉症になったらどうしたらいいの?
猫の場合は外に出さず、家の中に花粉をもちこまなければいいのです。
犬も家の中だけにいればいいのですが、
いかんせん彼らは散歩が大好き、
また外でしかトイレをしない犬もいます。
しょうがないので、花粉の少ない時間に散歩をしましょう。
花粉は昼と夕方が一番飛ぶそうなのでその時間はさけましょう。
また花粉のつきにくいツルツルした洋服を着せましょう。
来た洋服は家の外で脱がしてください。
家に入ったら濡らしたタオルで体についた花粉をふき取りましょう。
マスクもできないのでとにかく花粉から遠ざけるしか方法はありません。
症状がひどい時は動物病院で診察を受けてください。

実は僕も3年ほど前から症状が出ているのです。
今も鼻水が出て、のどがイガイガしています。
診療中鼻水が垂れていても、気にしないでください。
年々ひどくなってきたような、
もし来年花粉症治っていたら、
僕のお腹の中に
“白いひものような新しいペット”を
飼っているかもしれません。


<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日

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