動物たちの不思議な生態の秘密
元動物園獣医師・ただいま五十三次どうぶつ病院獣医師、動物たちの不思議にせまります。
プロフィール

つきまるにゃん

Author:つきまるにゃん
生き物を飼うことが
大好きな獣医師です。
いろいろな生き物に
“咬まれ・蹴られ・踏まれ・刺され”
こんな経験から
動物達の不思議な生態にせまります。

フリーエリア
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
動物達の不思議な生態の秘密
リンクフリーです。
バナー
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR

2014.01.29_11:39



モミモミ

昼ごはんを食べ、僕は木陰でお昼寝をしていました。
“あさこ”は、お昼寝をしている僕の横に座り、
右手で、僕の左手をしっかり掴みました。
そして、僕の左手を自分の脇の下に持っていきました。
眠たい僕は彼女の手を振り払いました。
しかし、彼女は僕の手を決して離しません。
何回も何回も脇の下に持っていきます
根負けした僕はしょうがなしに、
脇の下に手を当て、モミモミ
彼女は仰向けに寝転がり、
“はっはっはっはっは”
口を大きく開けて笑います。
ひとしきり笑うと、
彼女は走って逃げ、
木の周りを3周、
再び僕の横に来て左手をつかみ
脇の下を、くすぐらせます。

その様子を見ていた“ふじこ”は“あさこ”が木の周りを走っている間に、
急いで木から降りてきて僕の上にまたがり、
彼女は僕の右手をつかみ自分の首に持っていきます。
僕はしょうがなし、くすぐると
“うっうっうっうっう”
彼女は口を閉じ、息を止め耐えながら笑います。
そして、ゆっくりと僕から離れ、木にのぼります。

“あさこ”は3歳のチンパンジー
“ふじこ”は3歳のオランウータン
彼女らは二人とも親の育児放棄のため
僕たちが育てていました。
昼休み、いつもお昼寝をしている僕の横で遊んでいました。
この時の二人のお気に入りは、
くすぐられること
“はっはっはっはっは”“うっうっうっう”と笑うこと。
チンパンジーもオランウータンも笑います。
昔から笑うことのできるのは人間だけと言われてきました。
そんなことはありません、僕の付き合ってきた動物達は結構笑います。
少なくとも、チンパンジー・オランウータンは間違いなく笑います。
笑いって何?
笑いにはいろいろありますが、大きくわけて次の2つの笑いがあります。
声を出しながら笑う「ラフ」
声は出さずにっこりとほほ笑む「スマイル」
僕はどんな時に笑うかというと、
・くすぐられる
・「8時だよ!全員集合!」を見たときなど
※ 僕の笑いの基本はドリフのギャグです。
面白いものを見た・聞いたなど
これらはおかしくて声の出る笑いで「ラフ」。
・子猫のかわいい寝顔などでほっこりした時
・おならを「ぷっ」で、ちょっと恥ずかしい時の「はにかみ」
・小学生の時、ライバルだった和夫が、算数の時間、簡単な答えを間違えた時、
僕は「ニヤ」嘲笑
これらの声を伴わないのは「スマイル」。

類人猿(チンパンジー・オランウータン・ゴリラ)は笑いますが、
くすぐられた時の「ラフ」以外の笑い「スマイル」はあるの?
以前、チンパンジーの笑いは人の笑い方とは全く異なっていると考えられていました。
人が笑う時は息を吐き出しますが、
チンパンジーは吸ったり吐いたりしながら笑うと言われていました。
しかし実際は人と同じように息を吐きながら笑っていました。
この笑い方は発声に関係し、話す能力には欠かせないものです。
この笑いができるということは、
練習をするともしかしたら言葉を発することができるかも。
そして、「ラフ」は間違いなくするのですが、
「スマイル」はあるのか?
チンパンジーは、仲間と遊んでいるときや、
僕と遊びたくてウズウズしているときに、
口を丸く開けた表情をします、
この“プレイ・フェイス”と呼ばれる表情は「スマイル」です。
このように、類人猿の笑いは、表情・呼吸法・声に共通点があることから、
笑いは有史以前の類人猿に起源があるようです。
スマイルの中の嘲笑は人間だけか、
ふじこのお母さん“キッキ”は、
以前、僕がヨーグルトをあげていた時
スプーンを僕から取り上げて返さないことがありました。
僕はスプーンを無理やり取り上げ、
さんざん彼女を怒りました。
怒って興奮していた僕は、
スプーンを持って歩き出したとたん滑って転んでしまいました。
僕の手から離れたスプーンは宙を舞い、
キッキの部屋の落ちていきました。
怒られてしょんぼりしていたキッキはそのスプーンをつかみ、
僕に向かって「ニヤリ」
あれは嘲笑でした。

犬は笑うのか?
人の笑いは基本的に顔の表情と声によって表現します。
笑う時の気持ちは、
可笑しい時、楽しい時・うれしい時・わくわくしている時です。
それから考えると、
犬は人のように目じりを下げ、口の両端をあげる“笑顔”の表情はしませんが、
とっても嬉しい時に尻尾を振ります。
これは笑いの表現の一種だと思います。
顔でなく尻尾で笑っているのです。
逆に水族館のショーでの“笑うアシカ”
顔は笑っていますが、調教師の命令に従っているので楽しい気持ちではありません。
あれは仕事をしているだけで本当の笑いではありません。
しいていえば、人間でいう愛想笑い、
心のこもっていない笑いです。
僕も“すすきの”“新宿”“蒲田”で、
何度も女性のこの笑顔に騙されました。

このような愛想笑いは人間だけですが、
動物達は、
それぞれ表現方法は違いますが
幸せな気分の時は、それぞれのやり方で、
楽しい気持ちやワクワク感や幸せの気持ちを表します。
猫のゴロゴロの時は顔も幸せそう、
フクロウも頭を撫ぜてあげると、目を閉じ幸せな顔
馬は顔を拭き拭きしてあげると“ブルブルブル”
ウサギは頭から体までなでなでするとうっとり、
みんな「スマイル」です。

やや太り気味のフレンチブルの老犬“タツオ”
足を痛め治療中、
タツオは僕を大嫌いです。
治療中は全く動かずおとなしいのですが、
ずーと僕をにらみつけています。
特に減量の話をしているときなど
“お前、余計なこというなよ”
という目で僕をにらみつけます。
しかし、そんな彼の目にも負けず
僕は飼い主さんに強く、
ごはんを減らすよう指示しました。
診察を終え後ろに振り向いた時、
僕は“ツルッ”と滑り、お尻からドスン。
床がタツオのよだれで濡れていたのでした。
お尻をさすっている僕を、
診察室からでるタツオは振り向きながら、
右口唇を少し上げ“にやっ”
「スマイル」です。




よろしくお願いします。



<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日
   

 


気に入ったらクリックお願いします

スポンサーサイト

2014.01.15_12:07
僕の朝食

「ソーセージつけようかな?」
朝の7時、僕はファミレスで朝食を選んでいました。
卵を付けた僕は、
「これ以上の肉類は食べられないな」
「ヨーグルトにしよ」
僕の朝食はコーヒーとパンとサラダ、時々卵
もしくはご飯とみそ汁と漬物で十分です。
少し前まで、「すき家」に入ると牛丼を食べていたのですが、
現在は肉のない朝定食を注文します。
最初に運ばれてきた“お代わり自由の薄いコーヒー”を飲みながら、
新聞を読んでいました。

“ジュワーピチピチ”
鉄板の上の肉汁がはじける音が静かな店内に響きました。
新聞のわきからその行先を見ていると、なんと僕のほうに向かってきました。
僕の右隣はぼくよりも30歳以上は年上の爺さん。
左となりは10歳ほど若い美しい女性。

そのステーキは男性の前に置かれました。

動物は一般に食べる餌の種類から
「肉を食べる肉食動物」「植物を食べる草食動物」「両方を食べる雑食動物」に分けられます。
動物の基本は肉食でした。
動物が生きていくためには、蛋白質が不可欠であり、
植物には蛋白質がほとんど含まれていないため、
肉を食べる必要があり、最初はみんな肉を食べていました。
しかし、動物は進化の過程で海から陸へ上陸しました。
その陸には“植物”という資源がたくさんありました。
そして、それを食べようという動物が現れたのでした。
その結果、植物だけで生きていける草食動物が生まれたのです。
ちなみに、進化の過程で最初に上陸した両生類は、今でもすべて肉食です。
動物達の祖先の魚も、一部を除きほとんどは肉食です。
※草食の魚は、淡水魚ではフナ、草魚、海水魚ではクマノミなど

では草食動物は植物には含まれない蛋白質をどうやって、
手に入れたのかというと、
草食動物は、お腹の中に微生物を飼い始めました。
消化管の中で生息している微生物は、
草食動物が消化できない植物の繊維をかわりに分解してあげます。
そして、この微生物は繊維を分解しながらお腹の中で増えます。
この微生物には蛋白質を多く含んでいるので、
草食動物はこの微生物を消化することにより蛋白質をとるのです。
草食動物もお腹の中の微生物を食べているので、ある意味肉食です。
草食動物の代表の牛や羊・キリンは体重の4分の1にもなる反芻胃をもっており、
この反芻胃に大量の微生物を飼っています。
反芻動物は消化できなかった草をもう一度口に戻し細かくし直す、
“反芻”という裏技までおこないました。
また植物は消化しにくいために長い腸をもちました。
最も効率的に植物を利用するシステムをもつことになりました。
ただし、巨大な胃をもつため体が重く、早く早走ることができなくなりました。
馬やネズミ・ウサギは、胃ではなく盲腸にたくさんの微生物を飼っています。
比較的小さい消化器ですむため体が軽く早く走ることができるのですが、
栄養分は盲腸の前にある小腸で吸収することが多いため
栄養の吸収効率が悪く、
必要な栄養(必須アミノ酸)を得るためには、たくさんの草を食べる必要があります。
しかし、たくさん食べることによりカロリーを摂りすぎてしまうことになり、
そのままではデブになってしまいます。
そのため、余分なエネルギーを消費するために彼らはせっせと走ります。
肉食の動物の胃は消化酵素をたっぷりだして蛋白質を分解する能力にたけています。
肉は消化しやすいため、腸の長さが短いのが特徴です。

犬・猫は草食?肉食?雑食?
犬や猫も胃で蛋白質を分解する消化酵素をたくさんだしています。
逆に植物に多く含まれる炭水化物を分解する能力は低く、
特に猫は炭水化物をほとんど消化できません。
4つの胃も大きな盲腸もなく腸も短いことから基本的に肉食です。
消化管も短く、歯や顎は肉を引き裂き、
骨をかみ砕くようにできているので肉食です。
あれ、「うちのワンちゃんキャベツ大好き」とか
「猫に“猫まんま”あげてたよ」という方が多いと思いますが、
これは人間と一緒に生活することによって、食べられるようになったというか、
植物の栄養もゆっくりではありますが消化吸収できるように適応したのです。
適応はしましたが、基本は肉食のため、
肉(動物性たんぱく)なしで栄養不足になってしまいます。
特に猫のほうが肉食に近い体になっているため肉を食べる必要があります。

人間はどうかというと、
体の大きさと比較した腸の長さは、
犬や猫より長く、牛より短い。
歯は肉食のための犬歯をもちながら、
草食のための大きな門歯と臼歯があるなど、
草食と肉食の両方の特徴をもっています。
また、唾液の中の消化液はデンプンを消化する機能をもっており、
肉食にはデンプンの分解が必要ないので唾液からは草食動物といえます。
このことから、犬や猫よりも植物をたくさん食べる、雑食動物といえます。

そして現在の僕は肉食動物から草食動物に変わってきた様子。
以前は、
朝「すき家」で牛どん大盛り、
昼「ラーメン二郎」大、野菜マシマシ、脂、にんにく多め、
夜は牛角で焼肉、
胃もたれなど無縁だったのですが・・・・。
現在はこれを書きながら想像しただけで
“胃もたれ”をしています。

人は年をとると、
体が肉を受け付けなくなった、
たくさん食べると翌日までお腹が空かない、
脂ものを食べると胃もたれがするなど、
胃の老化を感じることがあります。
胃の老化って?
胃は中に食べ物が入ってくると胃液を出します。
この液とともに蠕動運動を行うことによって食べ物を消化します。
しかし、年をとると胃液の量がだんだん少なくなってきます。
少なくなった胃液を補うために、
胃は蠕動運動を一生懸命しなければならなくなり、
胃はたくさん動き、体全体が疲れてしまいます。
この疲れが胃もたれや胃のむかつきとなります。
そうならないように、体が消化の良いものを欲するようになります。
爺さんはなぜ朝からステーキが食べられるの?
実は、胃の動きは年齢の変化よりもストレスや食生活に影響されるので、
年齢の変化がないことが多いのです。
胃の年齢は実年齢と大きく違うことが多いのです。
その結果として、
ソーセージを食べない僕と、
朝からステーキを食べる老人が
隣り合って一緒に朝食をとることになったのです。

“ジュワーピチピチ”
またまた僕のほうに向かってきました。
今度は左となりの女性に。

僕はコーヒーをお代わり
爺さんはご飯をお代わり
爺さんカッコイイ
今年の目標
“朝からサーロイン300g”
爺さんに負けないぞ。

ちなみに今日の昼食は
胃にやさしい“五穀米の雑炊”です。




よろしくお願いします。



<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日
   

 


気に入ったらクリックお願いします


2014.01.04_22:48
“モカ”と僕

昨晩の吹雪が嘘のように晴れ、久しぶりに雲一つない青空。
太陽の光は1メートル近く積もった新雪をキラキラと光らせていました。
この年は12月だというのに大寒波がやってきて、毎日のように雪が降っていました。
そんな中を、長靴を履いた僕は、ミルクのたっぷり入った大きな哺乳瓶を左手にもち、
もう片方の手に持ったスコップで、雪をラッセルしながら病院の入院室に向かいました。
ドアの前には、昨晩の風で60cmほどの雪が吹き溜まっていました。
ミルクが冷めないように上着を雪の上に広げ、その上に哺乳瓶を置き、
空いた両手でスコップもち、ドアの前の雪をかきました。
ドアを開け  「おはよう」
僕の姿を見た“モカ”はゆっくりと立ち上がり、
鼻から白い息を出しながら、ピョコタンピョコタンと近づいてきました。
鼻を僕のお腹に押し付けて甘えてきます。
今日は熱もなく調子のいい様子。
“モカ”は生後6か月のサラブレット。
生まれつき体が弱く、ミルクの飲みも悪い体の小さな仔でした。
そのうえ2か月前に右前足を骨折し、ギブスを巻いていました。
この仔の担当は僕です。
名前もなかったため、きれいな栗毛から僕が“モカ”と名付けました。
今から20年以上前の学生時代の話です。

まず哺乳瓶でミルクをあげます。
もう離乳の時期なのに、まだまだ飲むのが下手で、
調子よく飲んでいたと思うと、ゲホッと鼻と口からミルクを吹き出したりしました。
20分ほどかけてゆっくりと飲み終えると
体中をタオルで拭きながらマッサージをしてやります。
特に鼻の穴と耳の穴を拭いている時は、目をつむりとっても気持ち良さそうです。
この日は体調が良さそうなため点滴をやめ、雪の中を散歩しました。
気温はマイナス10℃、
だけど太陽の光が気持ちいいのか、
モカは僕の後ろをピョコタンピョコタンご機嫌についてきます。
ギブスがとれればもっと自由に駆け回れるのに・・・
春には一緒に走ろうね。

僕は馬が大好きです。
初めての馬の治療は“モコ”、
初めての乗馬を教わったのはアラブ種の“ケイシュウ”
初めて調教したのは木曽馬の“さくら”。
僕をけったシマウマ、削蹄が大変だったロバ
僕と一緒にたくさんの子供を乗せたポニー
よく噛みつかれたミニチュアホース
僕に小遣いを与えてくれた“シンボリルドルフ”
僕の小遣いをすべて奪い取った“ゴールドシチー”
僕は今までたくさんの馬たちと付き合ってきました。

馬は普段とってもやさしいのに、時々意地悪したり、
時には甘えたり・・・
とっても賢く、楽しい動物です。
信頼関係ができると本当の相棒になることができます。
面長の顔・長い首と長い足・引き締まった筋肉・
第3指を残し他の指が退化した堅い蹄。
走るために特化した体は美しく、
たてがみをなびかせ、全力で走っている姿は見るもの誰をも魅了します。

馬は人間との付き合いも長く、
軍用・運搬用・農耕用・乗馬用として人間の発展には欠かせない生き物です。
鍛え抜かれた体も美しいのですが、
あの優しい目も僕の心をわしづかみにしました。
顔の横についた目の視野は350度もあります。
そのため頭を動かさなくても、真後ろ以外は見ることができます。
長時間走るためにとても強靭な心臓を持っています。
一般的に、哺乳類の心臓の筋肉は、
下から上へ向かって収縮して血液を全身に送るのですが、
馬の心臓は大きく、全体が同時に収縮するため、
血液を力強く効率良く全身に送ることができます。
心臓の動きも休んでいるときは静か(血圧)で回数(脈拍数)も少ないのですが、
走り出すと激しく(血圧)早く(脈拍)なり
全身に大量のエネルギー(血液)を送ることができます。
いつでも走り出せるように立って寝ますが、
安心な場所では横になります。
食べ物は草が主食ですが、大の甘党でリンゴなどが好きで、特に角砂糖が大好きです。
僕もさくらの調教終了時にご褒美で角砂糖をあげたりしました。
馬は、人間以外で汗をかくことのできる数少ない動物のひとつです。
乗馬の後は、首・鞍の下・脇・太ももの内側などがびしょぬれになります。
乗馬後の手入れはこの汗を拭いてあげることから始めます。
夏の暑い時期はホースの水で全身を洗ってあげたりもします。

馬の世話で大変なのは削蹄。
馬の蹄は常に伸びるため定期的な削蹄が必要です。
この削蹄を失敗するとそれだけで病気になることもあります。
逆に大成功した例もあります。
地方競馬から三流の血統ながら、中央競馬にでて大活躍したオグリキャップは、
子供の時は自力で立てないぐらいの障害を足に抱えていました。
しかし、足の形に合わせた適切な削蹄をすることにより、
足はすっかり治り、
ついに“芦毛の怪物”と呼ばれるほどになりました。
馬にとって立てないことは死を意味しており、
この怪物オグリキャップも転倒による複雑骨折で、
残念なことに安楽死となりました。

年末になるとやや寒波も緩み、暖かい日が続きました。
少しでも太陽が出ると“モカと僕”は散歩を楽しみました。
“モカ”は体が小さく体重が軽いので、
ギブスで固定した足でも体を支えることができました。
しかし、雪の上ではギブスが滑るため、
彼は体を常に僕にくっつけ、僕の体が彼の足の代わりとなりました。
この時期の彼は食欲もあり、少しではありますが牧草を食べるようになりました。
このまま元気になれば、春までにギブスがとれるかも・・・。

年が明け、1990年“午年”を迎えました。
しかし、新年は大雪で始まり、
彼を薄暗い入院舎からだすことができません。
松の内の頃には呼吸の状態が悪くなり、
再び点滴の日々となりました。
僕が行ったとき以外はほとんど座っているらしく、
お尻には床ずれが。
体をひっくり返し、敷き藁でのマッサージをします。
全身のマッサージの後、
首をひっぱって無理に立たせます。
ふらふらしながら何とか立っていますが、
毎日立てる時間が減ってきます。
この時の僕は、太陽さえ出れば“モカ”は元気になると信じていました。
新しい年になり半月ほど過ぎました、
“モカ”は何も食べなくなり、
ここ数日はミルクをほんの少し飲んだだけです。
この日の朝は快晴でした。
太陽の光は雪を照らしていました。
僕はあまりのまぶしさに、目を細めながら
両手にミルクと点滴セットを持ち“モカ”のもとに向かいました。
「おはよう」
ドアを開けるといつものところに“モカ”はいません。
小さな窓の前で、太陽の光を受け立っていました。
そして、僕を見るとゆっくり近づいてきて頭をスリスリ、
お腹が空いたのか半分ほどではありますがミルクをゴクゴクと飲みました。
「散歩するか?」僕がいうと、
「ブㇽㇽㇽ・・・・・・・」モカが鼻を鳴らしました。
陽の光を浴びながら、僕たちはゆっくりと病院の周りを1周しました。
「雪が解けたら一緒に走ろうな」
頭を上下に振りながら「ブㇽㇽㇽㇽ・・・・」
その日の午後から再び雪が降り出しました。
夜にはすべての音を消し去るのではないかというほどの雪が降っていました。
翌朝は風も吹き猛吹雪でした。
スコップで道をつくりながらモカの所へ向かいました。
ドアの前の雪をどかしドアをあけました。
「おはよう」
モカはフカフカの敷き藁の上で横たわっていました。
「おはよう」もう一回、さっきより少し大きな声で・・。

モカは2度と陽の光を見ることはありませんでした。

今頃、天国で思いっきり走っているでしょう。

今年はあれから2度目の“午年”。
“モカ”の優しいまなざしが思い浮かびます。



よろしくお願いします。



<五十三次どうぶつ病院  北澤 功>
 東京都大田区大森東1-5-2
 病院の診療時間 午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
         日曜日は午後17:00までとなります。  
 休診日 月曜日
   

 


気に入ったらクリックお願いします