動物たちの不思議な生態の秘密
元動物園獣医師・ただいま五十三次どうぶつ病院獣医師、動物たちの不思議にせまります。
プロフィール

つきまるにゃん

Author:つきまるにゃん
生き物を飼うことが
大好きな獣医師です。
いろいろな生き物に
“咬まれ・蹴られ・踏まれ・刺され”
こんな経験から
動物達の不思議な生態にせまります。

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動物達の不思議な生態の秘密
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2012.03.30_20:31
桜の思い出

「あーーーーーーー」
小学校低学年ぐらいの男の子が、ペリカン池に向かって指をさしていました。
あまりの驚きのためか、男の子の口は大きく開いたまま、声にはなっていません。

ペリカンといえば短い足に、太った体、体と同じぐらい長い膨らんだ嘴
誰もが姿を思い浮かべることができるほど愛されている鳥です。
10㎏近い重い体を大きく横に揺らしながら歩く姿も、とってもユーモラス。
そして、某宅急便のキャラクターに採用されたり、

ヤッターマンの“ヤッターペリカン”になるなど

ほのぼの としたイメージがあり
嫌いな人がいない程とっても愛嬌のある鳥です。

動物園でのペリカンの餌はアジとワカサギでした。
僕がアジとワカサギを入れたバケツをもってペリカン池に入っていくと、
池の反対側で、首を180度大きく曲げて長いくちばしを羽の上に乗せて休んでいた

ハイイロペリカン「マドカ」

僕を見つけるなり、大きく羽をはばたかせ、池に飛び込みこちらに向かってきます。




僕はバケツから取りだした一匹のアジを、
放物線を描くように、優しくマドカの目の前になげました。
マドカは嘴を大きく開き、上手にアジを受け止めます。
嘴を空に向けアジを喉に送ります。
再び僕に向かい羽をはばたかせもっとよこせのアピール。
僕は次から次へと投げます。
アジが終わると、今度はワカサギを池の中にばら撒きます。
マドカは嘴を大きく開き、池の水と一緒にワカサギをすくいます。
この時に、水がいっぱいはいった嘴の下のノド袋は大きく膨らみ、

ぺりかん2

ペリカンのイメージのあの特徴的な姿となります。
普段は嘴の下は膨らんでいません。
あのノド袋にはバケツ一杯分ぐらいの水が入ります。
水だけを上手に吐きだし、嘴を上に向けワカサギを胃に送ります。
ちなみに「マドカ」の大きさは、
嘴の長さ50センチ、
翼を広げる2メートルを超えるとても巨大な鳥でした。


実は僕、ペリカンが怖いのです。
アジをあげるタイミングを失敗したときに、すごい速さで近づいてきたマドカに
アジを持った僕の右手が、肘の部分から手の先までパクリ
噛まれたと言うか、
嘴の中にはいってしまったのです。
嘴のふちは硬く薄く鋭いうえに、ものすごい速さで嘴を閉じるため、
鋏まれた場所はぱっくりと切れ、傷ができていました。
とっても痛かったのを覚えています。
それ以来、ペリカン池に入った時は、常にマドカの位置を確認しながら、
一定の距離を保っていました。

この日はサクラが散り始めた暖かい日でした。



ニホンザルは舞い落ちてくるサクラを捕まえては食べ、楽しんでいました。
アシカ池にも一面にサクラが浮き、サクラの花びらの中からアシカが顔をだしています。
僕は、ジャンパーを脱ぎ、春の日差しを楽しみながらサクラが降り注ぐ中
動物たちを見回っていました。

そんな時の出来事でした。
母親と一緒に来ていた男の子が、ペリカン池を指差し

「あーーーーーーーーーーー」

指の先を見ると、
ヒラヒラと舞うサクラの中、

マドカの嘴から人の胴体と手と足が飛び出していました。

今までで一番の衝撃的映像。
映画の一場面のようでした。

手で嘴を開くと、○○ちゃんがでてきました。
○○ちゃんは20代のスレンダーな美女。

首のあたりに若干の傷はありそうですが、大きなケガはなさそうでした。
彼女は何事もなかったように、横に転がっていたチリトリとほうきをもち、
再びサクラの花びらを集め始めました。


決定

あまりの出来事に、僕は声を掛けていいのか迷いながら、その場を離れました。
男の子は、口を大きく開けたまま、お母さんに腕を引っ張られ、
ひきづられながらその場を離れていきました。

数日後どうしても気になったため、○○ちゃんに話を聞きました。
彼女のほっぺと首の傷があの出来事が、
僕の見間違いではなく本当にあったことを証明していました。
彼女によると、サクラの花びらの掃除をしていた時、
集めたサクラをチリトリに入れようと頭を下げた
その瞬間、
激痛とともに、

“突然世の中が真っ暗”になったそうです。

その後は、あまりの恥ずかしさで、
何もなかったかのように掃除を続けたようでした。

僕はサクラを見るとあの光景が思い浮かびます。



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2012.03.23_23:10

どんだけ入るの?


小学生の僕は学校から帰ると、まずカラの餌箱にひまわりの種を一掴み入れました
「コロン」は僕の足音を知っているので、ケージの近づいた時には、
すでに餌箱の前でまっていました。
そして、ひまわりを入れると、餌箱の前ですくっと立ち上がり、
小さな手でせっせと口の中に詰め込みます。
その速さは、早送りのテープを見ているようでした。
餌箱がカラになると次はキャベツを手渡します。
両手で器用にもち
 “シャキシャキシャキ” 軽快な音をたて、周りから齧り始めます。
ある程度小さくなると、最後は一気に口の中に両手で押し込みます。
この時の顔の大きさは、すでに倍以上の大きさになっています。
最後は小指の先ほどの人参 
“カリカリカリカリ” あっという間に小さくなり、
やっぱり最後は両手で口の中に押し込みます。
両頬はこれでもかというぐらいにパンパンに膨れ上がっていました。

そして、 スタスタ とケージの隅に作ってある、
刻んだ新聞紙を敷き詰めた部屋に帰っていきました。
そこで、まず人参、次にキャベツ、ひまわりの順で口から出し始めました。
今度はテープの逆回しを見ているようでした。
すべて出し終わると、その上にせっせと新聞を上にかぶせて隠してしまいました。
僕はいつも、この一連の作業を正座しながら、ランドセルを背負ったまま覗き込んでいました。

コロンはマルマル太ったゴールデンハムスター

僕の最初のペットです。
前も書きましたが、この頃はハムスターの餌といえば、ひまわりの種でした。
おかげですごいデブでした。
ひまわりの種はいっぱいあげちゃだめですよ。

小学生の僕はどうしても気になっていることがありました。
いったいあの頬袋にどれくらいひまわりがはいるのだろう?
ある時僕は実験してみました。
いつもは餌箱に入れるひまわりを手でひとつずつ渡し、数えてみました。
結果は何と87個でした。88個目を渡そうとした時はさっと後ろを向き、
刻んだ新聞紙の部屋にヨタヨタと帰っていきました。
その後も観察を続けると、部屋の中で、両手で頬をおしながら舌を器用に使い
口から一個ずつ取り出しました。出てきた数はなぜか85個、
2個は両頬にひとつずつしまっておいたようです。

もう一つ実験をしました。
僕の口にはどのぐらいの“かっぱえびせん”が入るのか?
なぜ“かっぱえびせん”か というと、この日のおやつだったからです。
ルールは噛まずに折らずに口の中に詰め込むです。
一本ずつ丁寧に入れます。横にしたり縦にしたり結構難しかったことを覚えています。
何回か挑戦し、最高は29本でした。
しかし、噛まずに無理やり押し込むため、口の中には細かい傷ができ、
“かっぱえびせん”の塩がしみました。
その後は異常にのどが渇き、コーラをがぶ飲み
食べ過ぎ飲み過ぎでお腹を壊してしまいました。
あんなに好きだった“かっぱえびせん”あれ以来食べていません。

ハムスターの祖先は地下に巣をつくり
夜中にこっそり出てきて天敵に見つからないようにしながら、餌を探して歩き回ります。
一回の外出で、できるだけいっぱいの餌を運ぶために
運搬方法としてほお袋を使うようになりました。
その結果あんなにも伸びて大きくなる頬袋をもつようになりました。
ペットのハムスターには天敵がいないので、
隠れて食べる必要もなく、餌を運ぶ必要もないのに、
本能で、餌を見るとついつい頬袋にいっぱい詰みたくなるようです。
ちなみにライオンやトラのように強い動物は
その場で食べればよく、運ぶ必要がないため頬袋がありません。

ニホンザルには頬袋があります。
ニホンザルの場合は群れで生活しているため、
運ぶというより他の仲間に取られないために、口の中に餌を詰め込みます。
動物園で観察していると、
強いニホンザルは取られることがないためか、
自分の周りに餌をかき集めるだけで、口の中に詰め込まずその場で食べます。
弱いニホンザルは、口の中に目いっぱいつめこみ、両腕にも餌を抱えて、
2足歩行で取られない場所に移動します。
お尻を少しつき出し、不器用に歩く姿は、
歩き始めたばかりの人間の赤ちゃんがおもちゃを抱えて歩く姿によく似ていて
結構かわいいです。

ある時、サル山を観察していると、
いつまでたっても一か所で止まったままのおじいちゃんサルがいました。
せっせと餌を口のなかに詰め込んでいるのですが、一向に動く気配がありません。
変だなと思いよく見ると、詰め込む度に頬から何かがこぼれていました。
双眼鏡で見てみると、頬に穴が開いていて、そこからこぼれていました。
口の中に入れた量と同じだけ頬から外にこぼれていました。
このサルさんは自分で穴が開いているのに気付いていないようで、
いつまでも口の中に詰め込んでいました。
どうやらケンカにより頬に穴が開いていたようです。
ほおっておいたら、
永遠に減らない餌を、永遠に入る口の中に詰め込み続けていそうでした。
しようがないので、捕まえて、頬の穴をふさぐ治療をしました。

「ハムスターの口から何か赤いものがだらりと出ている」という病気があります。
何かとは頬袋です。頬袋脱という病気です。
口から詰め込んだ物を、ハムスターが自分で取り出す時に、
それが頬袋に引っかかり、頬袋が反転し餌と一緒に口から飛び出してしまうことがあります。
自分で戻せればいいのですが、長時間出しっぱなしになっていると自分で噛んだり、
踏んだりして傷がついたり、腫れたりします。
そうなると壊死したり戻らなくなることがあります。
そんな時の応急処置は、
濡らした綿棒でそっと押し戻してください。
無理やりやってはダメですよ、頬袋に穴が開いたら大変です。
戻らなかったり、すぐにまた出てしまうときは病院に連れてきてください。
予防としては炊いたお米や、うどん、パスタなど粘着性のある食べ物は、
頬袋からうまく出しにくいため、あげないでください。

現在の僕、たった今、気になったことがあります。
このブログをかきながらリッツを食べているのですが、
リッツを噛まずに丸いまま、僕の口に何個入るかな?


「ぐぇ ぐぇ ゲフゥー ゴフゥー」
パソコンのモニターに16枚のリッツのかすが張り付いています。
残念 




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2012.03.18_13:22

「サルの惑星」 


車のボンネットの上で「ドンドンドン」

飛び跳ねる黒い大きな塊。
フロントガラスを蹴る太い足と殴りつける拳。
車内で恐怖に震える4人の男。

黒い塊は保護区から脱走したチンパンジーの“ブルーノ”とその仲間達。

何気なくつけたテレビでこんなシーンが映っていました。
あー「サルの惑星」の放映か。
と思っていたら、アフリカ西部シエラレオネで実際におきた出来事の再現フィルムでした。
ぐわー 恐ろしい、「サルの惑星」の場面そのもの。
やがてフロントガラスは突き破られ
筋骨隆々のチンパンジー“ブルーノ”が車の中に入ってきました。
運転手が必死にエンジンをかけ、車を動かし、何とかその場からは逃げたのですが、
すぐにフェンスに激突、エンジンが止まってしまいました。
そして、再び襲ってきたブルーノは運転手を車から引きずりだし、
両手両足の爪をはがしたうえに、顔面全部を食べてしまいました。

チンパンジーというとやさしく・賢い

“志村どうぶつえんのパンくん”を思い浮かべる人が多いと思います。

あんなにも可愛いチンパンジーが人間を襲って、そのうえ食べてしまうなんてあり得ない、

人間を襲うとしたら“ゴリラ”だよなと思うかもしれません。

でも実は、チンパンジーは果物や木の実も好きですが、お肉も大好き
野生では小さなサルを、集団で襲って食べたりもします。
力もすごく握力は軽く300㎏を超えると言われています。
成人男性の7倍以上。
僕の目の前で雄のチンパンジー“サトシ”は、
直径2.5cmの鉄棒を、腕力だけでグニャと曲げたことがあります。
腕力もすごいのですが、発達した顎による噛む力もすごく、
トンカチでもなかなか割れない固い殻をもつオニグルミを、
2~3個口に放りこみ、いっきに簡単にバリバリと割ってしまいます。
人の指など簡単に噛みちぎってしまいます。

逆にゴリラは葉や木の実・果物などしか食べず、肉は食べません。完全な草食です。 

ゴリラはキングコングのイメージが強く

「凶暴で怖い動物」と思われ、「猿の惑星」の中でも、
ゴリラ族は好戦的な軍事集団として描かれています。
しかし、近年ゴリラの研究が進むにつれ、

本当は人間よりもはるかに

 道徳的 であり 平和主義者 だとわかってきました。

好戦的なポーズに思われがちな、胸を拳で叩くドラミングの行為は、

実は戦いを避けるためにおこなっているジェスチャーなのです。
ドラミングの典型的イメージは敵に向かい

「かかってこい」と争いを挑発しているように見えますが、

相手に向かい自分がこの群れのリーダーであることを示し

「さっさと立ち去れ」という威嚇の意味なのです。

戦いを避けるためにおこなっているのです。

では、肉を食べるチンパンジーのパン君の、
テレビの中の“優しさ”は演技なのでしょうか、
本当は“暴れん坊で凶暴”なのでしょうか、
そんなことはありません。
僕は、親が育児放棄したチンパンジーのアサコを育てたことがあります。
チンパンジーは人に最も近縁な動物で、賢く社会的な動物です。
その社会的能力は人と比べても劣ることはありません。
実際アサコも、賢く、遊ぶことが大好きな陽気な女の子でした。
僕が手をケガした時、その傷口を心配そうにのぞき込み、
指で優しく撫ぜてくれる優しい子でした。
時々気に入らないことがあると、怒って興奮することはありましたが、
抱っこをするとすぐに落ち着きました。
基本的に陽気でお茶目で優しい生き物です。

それなのになぜ、ブルーノは人間を襲ったのでしょうか。

食べるために小型のサルを襲うことはありますが、
車に乗った人間を襲うのは、食べるためではありません。
顔は食べられましたが、本当にお腹がすいて襲ったとしたら、
顔だけではなく全てを食べ尽くします。

ブルーノは子供の時に、保護区域のマネージャーに引き取られました。
非常に力があり賢いチンパンジーでした。
ここに今回の事件の理由があると思います。
「子供の時連れてこられた」ということは、
たぶん母親は死んでしまったと思います。
チンパンジーの母親の愛情は深く、いつも抱っこをし、常に子供を見守っています。
死んでしまう以外に一人でいることは考えにくいのです。
死んだ理由は病気だったのでしょうか?
ブルーノの異常なまでの執念深い襲い方は

餌のためではなく憎しみ・恨みからだと思われます。

ブルーノは子供のとき人間を恨むような体験をしたのでは、

“目の前で人間の手によって母親を殺された”ことが想像できます。

非常に賢いチンパンジーは
楽しかったこと、優しくされたこと、愛情も覚えていてくれますが、
憎しみも忘れません。
悲しいことにチンパンジーの賢さは
人間への恨みを忘れさせず、増幅させていたのではないのでしょうか。
そしてこのような悲劇が起こってしまったのです。

アサコと僕は親子でした。お互いが愛情で結びついていました。
チンパンジーは決して、理由もなく暴れたり襲ったりする
“野蛮で凶暴な生き物”ではありません。
僕の付き合ったチンパンジー アニー・ミセス・サトシ・タダシ・タカ・アツシ 
みんな性格は違いましたが、共通していたのは賢くやさしかったことです。

保護区から逃走した31頭のブルーノとその仲間たちは、
その後27頭は捕まりましたが、ブルーノを含む4頭の行方は今も不明です。
森に中で潜んで静かに暮らしているのでしょうか、
それとも・・・・。

<東京都大田区大森東 五十三次どうぶつ病院 獣医師 北澤 功>




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2012.03.11_20:10

舐める

「痛て」

僕の左手の人差し指にモモちゃんの犬歯がみごとに食い込んでいました。
犬歯が神経を直撃しているのか、
つま先から、頭のてっぺんまで

ピキーンと痛みが突き抜けました。

しかし、噛まれ慣れている僕は、こんなことでは動揺しません。
できるだけ冷静を装い、

優しく 「痛いじゃない」とモモに声をかけました。

モモちゃんは、はっと我に返ったのか、すまなそうに口を開けました。

モモちゃんは腫瘍の手術のため入院していたちっちゃなチワワです。
手術後の傷口の様子をみるため、
僕が不用意に傷口に触れてしまったための “ガブリ”でした。

人差し指には、上下2つの見事な穴、
そこから、ゆっくりと赤い液体が流れ始めました。
痛さのため、しかめっ面で傷口を見ている僕に

モモは顔を傾け、下から僕の顔を覗き込みました。
モモの潤ませたまん丸の大きな目と
僕の痛みをこらえ、小さくなった目がパチッと合いました。
あのウルウル目は間違いなく、僕のことを心配していました。
自分で噛んだのに

しかし、この目は僕から“痛みと怒り”をとりさってくれました。
今度モモは、僕の人差し指をぺろぺろと舐めはじめました。
不思議なことに、舐められていると、本当に傷の痛みがやわらぎました。

犬や猫はケガをすると、その傷口を舐めます。
自分が届かない場所のときは、仲間同士で舐めあいます。
舐めることで傷口をきれいにし、痛みを和らげます。
このように動物たちがケガや病気を自分で治したり、
予防をしたりする行為を

「ズーファーマコロジー zoopharmacognosy」と言います。

チンパンジーはお腹が痛いとある種の薬草を食べることで知られています。
ゾウもある特定の場所の土を食べます。豊富に含まれているミネラルをとるためと、
草に含まれている毒を吸着させ、体の外に出す解毒の為に食べます。
ウサギ・ハムスター、他の動物たちもケガをすると傷口をよく舐めます。
僕たち人間も、誰かに教わったわけではなく、
指を切ったら無意識にその指をくわえ、傷口を舐めたり、唾液をつけたりします。
その間は確かに痛みが和らぎますし、血も出にくくなっています。

舐めることは、治療になるの?

唾液の中には細菌の活動を抑えたり、破壊する働きの物質が含まれており、
また血を出にくくしたり、傷を修復する酵素も含んでいます。
その他、痛みを和らげる働きもしてくれます。
唾液には確かに傷を治す効果があります。

しかし、傷を治すはずの唾液が、時には傷を悪化させてしまうこともあります。
唾液には治す物質とともにバクテリアも含まれており、
このバクテリアが問題を起こすこともあります。
また、舐めすぎによっての炎症がおき、皮膚炎や脱毛が起こることがあります。
猫に舐められことのある人はわかると思いますが、
猫の舌はザラザラしており、少し長く同じ場所を舐められていると、痛く感じます。
あのザラザラの舌で舐め続けると、皮膚は赤く炎症が起こしてしまいます。

手術の傷口の縫合した糸を、動物たちは治療のためとは理解せず、
異物と思い、とってしまおうと必死に舐めたりもします。
そのことにより、縫合した糸が取れてしまい、
ぱっくりと傷口が開いてしまうこともあります。
このように、舐めすぎは治すどころか悪化させることになります。

僕たち人間と暮らしているペットたちは野生の動物と違い餌を探す必要はありません。
また敵に襲われることもないため、周りに注意を払う必要もないため暇がたっぷりあります。
そのため暇な時間は、傷を必要以上に舐め続けてしまい、
結果として唾液の効果より、舐めすぎによる悪化の方が問題となってしまいます。
その防止のため僕たち獣医師は、
手術後にエリザベスカラー(首の回りにおおきな円錐形の物)
を付け傷口に口が届かないようにしたり、包帯で覆ったりします。

噛まれ慣れた僕が教える、噛まれたらどうするか? 

★噛まれたら冷静に話しかけ、相手の興奮を抑える。
噛むことは悪いと知っているため「しまった」と思い離してくれます。
逆に興奮すると「離すものか」といっそう強く噛みます。
ただし、野生の動物はだめですよ。噛むことをちっとも悪いとおもっていませんし
何と言っても人間は敵ですから、傷つけようと噛むのです。
もしくは餌として食べるために噛むのですから。                            

★噛まれた場所を無理に引っ張らない。
逆に口の中に押し込むぐらいがいい。  
犬歯の向きを考えて下さい、口の奥の方向に曲がっていますよ。
引き抜こうとするといっそう食い込みます。
押し込むと犬歯が外れやすいとともに
奥に押し込むことによって苦しくて口をひらきます。


猫は〝舐める”が大好き

眠る前に手を舐め、
目を覚ませば体を舐め、
御飯の後も体中を舐め、
何かする前と後にとりあえず舐めます。 

舐める理由は、
体をきれいにする 
ノミを退治する 
無駄な毛を取り除くためといわれています。 
飼い猫の祖先は暑い北アフリカの砂漠に暮らしていたため、
毛を濡らすことにより気化熱を発生させ体を冷やしたとも言われています。

そして、舐めている時はとっても幸せそう。                          
高いところに飛び乗ろうとジャンプしたのに落ちた時、
虫を捕まえようとして失敗したとき、
恥ずかしい時の照れ隠しに体を舐めます。  
怒られた時にもやっぱり体を舐めます。              
舐めることは心を落ち着かせる作用もありそうです。

噛まれて今まで一番痛かったのは
シマウマ。      
上下に立派な歯がきれいに並んでいて、噛まれると広い範囲でとっても痛い。
咬まれた場所はお尻 ズボンの上からだったけど見事な歯型が1か月のこりました。

<東京都大田区大森東 五十三次どうぶつ病院 獣医師 北澤 功>




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2012.03.02_20:34
狂犬病

『大分大は、狂犬病ウイルスを破壊する
「スーパー抗体酵素」の開発に成功したと発表した。
同大によると、人から取り出した抗体を持つ遺伝子を
使ったケースは世界初で、
現在、狂犬病に有効な治療法はないが、
人への応用が可能になれば、
狂犬病が不治の病でなくなる可能性があるという。』

こんなうれしいニュースが入ってきました。

“狂犬病” 
僕はこの病気がとっても怖いのです。
学生時代に見た「狂犬病撲滅ビデオ」は、
“よだれを垂らしながら唸る犬”
“両手・両足をベットに縛られた人間”
東南アジアで実際に狂犬病に感染した犬と人間のビデオでした。
どんなホラー映画よりも怖く
僕の脳の一部にその映像がしっかりと刻み込まれてしまいました。
しばらくは夢にも・・・・。

名前もすごい 狂犬病 「狂う犬の病気」
またの名は 恐水病 「恐れる水の病」
どちらにしても、なんとも恐ろしい。

感染方法と症状も恐ろしい
この病気のウイルスは唾液中にたくさん存在し、
他の生き物を噛むことによって感染を広げていきます。
狂犬病の犬に噛まれると、唾液中にあるウイルスが
傷口より体内に侵入し感染してしまいます。
体内に入ったウイルスは、脳と唾液線の中で増殖します。
ここからがすごいのですが、
唾液を他の生き物の体内にいれるため、
“噛みつきたくなる”ように脳を支配するのです。
うわー恐ろしい。
感染すると、最初は今まで人懐こかったワンちゃんが、
常に不安な様子で落ち着かなくなり、暗がりを好み
“大好きな飼い主さん”からも隠れるようになります。
そのうち今度は、あてもなくフラフラ歩きだし、

だんだん 狂躁状態 に変わっていきます。

そして、“大好きな飼い主さん”のこともわからなくなってしまいます。
アーなんて悲しいのだろう 
水を見ると痙攣がおきるため、喉が渇いているにもかかわらず、
水を恐れるようになります。
これが「恐水病」の名の謂われです。
目は血走しり、
口を大きく開け、ヨダレをだらだら垂らしながら、
低くしわがれた声で唸ります。

「う~~」
そして、
目の前にあるものをすべて噛みつくようになります。

まるでバイオハザードの犬のよう
最後には、
筋肉が麻痺し、歩けなくなり、
目は斜視となり、左右の瞳孔の大きさも異なり、
痩せ衰えて苦しみながら死んでいきます。

発症すると治療方法がなく、ほぼ100%死亡します。

「狂犬病」は名前から、犬だけの病気と思われがちですが、
すべての哺乳類が感染します。
僕たち人間にもうつります。         

 現在の日本にはない病気ではありますが、
以前は日本の犬にもこの病気がありました。
そして狂犬病の犬に噛まれて、亡くなる人もいました。
そのため昭和25年の狂犬病予防法により
飼い犬の登録と ワクチン接種の義務化となり、
徹底した野良犬の駆除によって、7年後には日本での発生がなくなりました。
日本では見られなくなった狂犬病ですが、
世界的にはまだまだ多く、毎年5万人近い人が命を落としています。
2006年には日本でも2名、フィリピンで犬に噛まれた人が狂犬病で死亡しました。
世界的にみると、狂犬病の清浄国は少なく10か国にも満たないのが現状です。
狂犬病の悲劇は人だけではありません。

中国は狂犬病多発地域であり、
2006年に雲南省で狂犬病予防の目的で5万匹の犬が撲殺されました。
人口約20万人の雲南省牟定県では、
この年、約360人が犬に咬まれ、うち3人が狂犬病で死亡しました。
亡くなった中には、4歳の少女も含まれていました。
そしてその後も犬が人を咬んだとの情報が相次いだため、
県政府は、公安局長をトップにした

「打狗(犬退治)隊」を組織、

厳しい「犬狩り」を行いました。

どのようなことがあったか、詳しいことはわかりませんが、
「撲殺」の言葉がすべてを表しています。

散歩の途中で、飼い主の目の前で殺されたとか、
車の検問で見つけ、その場で殺された、
中には、夜間に処分者らが物音を立て、
イヌの鳴き声から居場所を突き止め、処分した
というニュースもありました。

現在の日本は、狂犬病の発症のない清浄国ではありますが、
犬に限らず狂犬病に感染している動物が、日本にもちこまれる可能性は常にあります。
狂犬病の治療法はありませんが、

『狂犬病予防のワクチン』はあります。

今現在は狂犬病のワクチンがこの恐ろしい病気に対抗する唯一の方法です。
春(4月~6月)は狂犬病の予防接種の時期となります。
日本に狂犬病を持ち込まないために、
また万が一発生した場合も流行させないために、
必ずワクチンを打ちましょう。
不幸な犬を出さないため、みんなの協力が必要です。


<東京都大田区大森東 五十三次どうぶつ病院 獣医師 北澤 功>




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